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高齢化率4割超 支援者にも寄る年波
支え合いの現場から 地域包括ケアの行方 サービスを守る(2)

社会 神奈川新聞  2018年07月03日 02:00

要支援者宅で掃除など生活援助を行うヘルパー(右)=山北町三保地域
要支援者宅で掃除など生活援助を行うヘルパー(右)=山北町三保地域

 山北町三保地域は、町中心部までは車で約30分の距離にある。バスの便はわずかで、車の運転ができないと買い物も難しい。

 通勤や子どもの教育の問題から、地域外、町外への若い世代の流出が止まらない。高齢化率は2017年9月末現在で42.5%。地域の絆は強いが、支え合いの基盤は弱体化している。

 山間部のため約9カ月間、要支援者にヘルパー派遣をしてくれる訪問介護事業所が見つからなかった。民間の配食サービスなども、同地域周辺を提供地域から外している。

 ひとたび身体が不自由になると、1人暮らしはもちろん、家族同居の場合でも、高齢者が地域で暮らし続けることが非常に厳しくなっている。

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 4月からヘルパー派遣が再開された山内和子さん(83)=仮名=も、そうした一人だ。

 腰が悪く、認定は「要支援2」。家事は難しい。息子の明さん(52)=同=との2人暮らしだが、明さんは町外の仕事のため、早朝に家を出て、夜は遅く帰宅する。

 和子さんは日中独居の状態。家事の援助に感謝するとともに、ヘルパーとのおしゃべりをとても楽しみにしている。

 明さんは「隣家と離れているので、母が倒れても誰も分からない。昼間はとても不安」と語る。ヘルパーの生活援助は、見守りや、話し相手として認知症予防の意義も大きいと考えている。

 ところが昨年、派遣が途絶した。「サービスを利用できなくても介護保険料が安くなるわけではない。役場には何とかしてほしいと思っていた」。今回の町の対応には感謝している。

 ただ、今後を考えると不安は尽きない。要支援者だけでなく、要介護者へのヘルパー派遣も難しくなるのではないかと懸念する。「働きながらの介護は難しい。もし母が認知症になったら、介護保険を十分に使えなければ生活できない」

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 4月から初めてヘルパー利用が始まったのが、前田清子さん(93)=仮名=。腰や膝が悪く、認定は「要支援2」。室内を歩くのがやっとで、家事はできないが、一軒家に1人で暮らす。

 夫は特別養護老人ホームに入所中。町外に暮らす長男の一郎さん(73)=同=からは同居を勧められているが、先祖や夫との歴史が積み重なった自宅への愛着は強い。「うちにいるのが一番いい。ここで暮らす。食事はお新香さえあれば大丈夫」

 環境の大きな変化は高齢者には良くないとも考え、一郎さんも当面は清子さんの1人暮らしを支えるつもりだ。これまで、一郎さんか一郎さんの妻が車で毎朝通い、朝食と昼食を用意。夕食は町社会福祉協議会の配食サービスを週5回利用してきた。入浴は週に1回、孫が来て介助している。

 ヘルパーの利用をずっと要望してきた。今回の町の取り組みで、ようやく4月から、掃除など家事援助でヘルパーを週1回利用できることになった。清子さんも「本当に良くやってくれる」と、ヘルパーの女性を気に入った様子だ。

 一郎さん自身も後期高齢者入りが近い。老老介護の負担は大きい。清子さんへのヘルパー訪問回数は複数回にし、料理もしてもらいたいと考えている。「近所も年寄りばかりで、自分の生活で手いっぱい。ヘルパーはどうしても必要」。地域の実情を見るにつけ、表情が曇る。「このままでは地域がなくなってしまうのではないか」

 ◆山北町三保地域の人口 山北町の丹沢湖以北の三保地域(同町中川、玄倉、世附、神尾田)の人口は1945年には2362人を数えたが、その後はほぼ一貫してして減少を続けた。住民の移転が生じた三保ダム完成後の80年には700人台に。さらに、ことし2018年5月1日現在は、212世帯496人となっている。


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