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視覚障害児へ手作業で絵本製本 葉山町の市民団体、活動10年

社会 神奈川新聞  2018年06月23日 10:17

市販の絵本をいったん解体し、点字を打った透明なシートを各ページに挟み込んだ後、製本し直すという
市販の絵本をいったん解体し、点字を打った透明なシートを各ページに挟み込んだ後、製本し直すという

 視覚障害がある子も、ない子も、同じ絵本を楽しんでほしい-。そんな思いで市販本を点訳、1冊ずつ手作業で製本し直し、学校や個人に無料で貸し出している市民団体がある。葉山町の「ユニバーサル絵本ライブラリーUniLeaf(ユニリーフ)」。ことし10年を迎えた活動は、支援を受けながらさらに広がろうとしている。

 点字プリンターや製本機などが置かれた作業場と私設図書館を兼ねた代表の大下利栄子さん(58)の自宅には、点字付き絵本約870冊がずらりと並ぶ。

 「最初は理解してくれる人が少なく苦労したが、多くの人に支えられてきた。感謝しかない」。大下さんはこう振り返る。

 大下さんの次女(21)が病気で視力を失ったのは幼少の頃だった。

 その後、障害のある子どもたちの教育を支えている国立特別支援教育総合研究所(横須賀市)を訪れていたが、そこで誰でも楽しめるユニバーサルデザインの絵本が英国で普及していることを知った。

 視覚障害者向けの本は、大半が白いページに点字を打っているだけ。「子どもが“読んでいる”のを見てとても寂しいと感じた。弱視の子は絵があれば見えるし、周りにいる人も一緒に読める」。活動を思い立ったのは10年ほど前のことだったという。

 現在メンバーは主婦ら約20人。うち数人が月1回、JR逗子駅近くの公共施設で点訳などに取り組む。

 透明なシートに点字を打ち出し、絵本の各ページに挟み込む。点字作成には細かいルールがあり、パソコンで打ち直した文章をそのまま点訳ソフトで変換するだけでは間違いが出てしまうこともある。

 活動を始めた当初も手探りだったが、試行錯誤するのは今も変わらない。

 それでも、やりがいは大きい。「子どもと(絵本を)共有できる喜びを知ることができた」「障害があってもなくても親しめることをあらためて実感した。本当に感謝している」といった声に、背中を押されてきた。

 一方で、賛同の輪も広がっている。携帯電話大手のKDDI南関東支社は今月、社内で積み立てたお金の一部を寄付。同社は点訳作業についても支援するなど、2012年から幅広い協力を続けている。

 大下さんはともに活動してくれる人を増やそうと普及にも力を入れる。来月22日には府中市民活動センタープラッツ(東京都府中市)で製作講座の講師を務める予定だ。


製作した点字付き絵本を手にする大下さん
製作した点字付き絵本を手にする大下さん

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