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地域力 担う人々
登下校の見守り、高齢者奮闘 葉山「子どもは社会の宝」

社会 神奈川新聞  2018年06月18日 02:00

子どもたちと他愛もない会話を楽しみながら、一緒に歩く石井さん(左から2人目)
子どもたちと他愛もない会話を楽しみながら、一緒に歩く石井さん(左から2人目)

 全国で登下校中の子どもたちが犯罪や事故に巻き込まれる被害が後を絶たない中、葉山町立長柄小学校(同町長柄)に通う児童の安全を見守り続けるお年寄りらがいる。片道40分の通学路を一緒に登校したり、病気を機に誰かの役に立てたらと始めたり…。やり方もきっかけも違えど、自主的な取り組みの根幹にあるのは「子どもは社会の宝物」との思い。「気を付けて」。通学路を歩く子どもたちに、今日も優しいまなざしを向ける。

一緒に登校16年


 午前7時。石井清江さん(80)はいつものように、駐在所の前で子どもたちを待つ。三々五々集まってくる1~6年生と共に、片道40分の通学路を毎朝歩くようになって16年がたった。

 児童が集まれば、にぎやかな時間の始まりだ。「ばあば、今日はね、田植えをするんだよ」。女の子が話し掛ける。ばあばは石井さんのあだ名だ。「泥んこになるねぇ。楽しむんだよ」。そう返すと、女児は大きくうなずく。「ばあば、運動会来てね!約束だよ!」。今度は別の女の子がせがむ。

 カーブのある長い下り坂を歩きながら、子どもたちと手をつなぐ。「手をつなごうとしなくなると、『あら、成長したのね』って、うれしくなるの」。石井さんにとって、子どもの成長こそが何よりの楽しみだ。

 町内に家を購入した娘夫婦と同居するため、64歳で埼玉県から葉山町内に引っ越し。直後から、子どもたちとの“通学”を始めた。「なんで始めたか、もう忘れちゃったわ」。朗らかに笑い、続ける。「ただ子どもがかわいいからそばにいたくてね。だって、社会の宝物だからね」

 石井さんの手にはいつも救急袋がある。消毒薬やガーゼ、ばんそうこう…。起伏のある通学路の途中で転んだ子どもがいても、すぐに手当てができるように、と持ち歩いている。

大病機に「誰かのために」


 「急に飛び出すと、危ないからね」「車が来てないか、左右ちゃんと見て」。学校近くの交通量の多い丁字路に、今日もかとちゃんの声が響く。150人以上の児童が利用する場所に、朝と昼下がりに立ち続けて10年ほどになる。

 かとちゃんこと加藤勇さん(78)は10年前、大病を患った。「完治は難しい」と告げられたが、別の病院で手術を受け、成功した。一度は諦めかけた命を多くの人に救われた。だからこそ、「この命に感謝して、誰かのためになることをしたい」とずっと願ってきた。機械メーカーを定年退職後、女の子が神社に連れ込まれる事件が近所で起きたと聞いた。住民4人と、ボランティアで防犯パトロールを始めた。それが今の見守り活動につながっている。


交差点に立ち、下校中の子どもたちに声を掛ける加藤さん(左)=葉山町
交差点に立ち、下校中の子どもたちに声を掛ける加藤さん(左)=葉山町

 「かとちゃーん!」。加藤さんを見つけて、元気に駆け寄ってくる子どもたち。「忘れ物ないか」「そろばん、頑張れよ」。名前を呼びながら、児童一人一人に声を掛ける。「子どもたちが楽しく、安心して成長できるようにするのは、年寄りの役目。元気なうちはずっと続けていきたいね」。加藤さんは目尻を下げた。


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