1. ホーム
  2. 経済
  3. どうなる生産緑地(下) 選択肢広げ営農支援

どうなる生産緑地(下) 選択肢広げ営農支援

経済 神奈川新聞  2018年05月26日 16:29

小松菜などが育つ「名水湧く湧く農園」。秦野駅から徒歩16分とアクセスも良い
小松菜などが育つ「名水湧く湧く農園」。秦野駅から徒歩16分とアクセスも良い

 市街化区域内に約210万平方メートルの農地があり、うち約100万平方メートルを生産緑地が占める秦野市。生産緑地面積は県内4位だ。

 秦野市とJAはだのなどは「秦野市都市農地保全活用推進協議会」を組織し、2022年以降も都市農地を残すための取り組みを行っている。しかし、16年に協議会が実施した農家アンケートでは、22年時には約3割の農家が一部または全部の買い取り申し出をする意向があったという。

 小田急不動産の担当者も「生産緑地に関して、県西部の地権者からの相談は増えている」と話す。「自らも年を取り、子どもの代では農業を続けないので相談に乗ってほしい、という話が多い。実際に区画整理を進めている案件もある」

研究会


 JAはだのは16年、他県のJAと共同で研究会を立ち上げ、具体的な対策を模索。相続税の納税猶予制度も適用され、農家の労力軽減と所得向上につながる「農家が運営する体験型農園」の開設支援に取り組んできた。

 ことし4月には、生産緑地を活用した市内初の体験型農園「名水湧く湧く農園」が開園。農家が主体となり、JAが全面的に支援して体験型農園を開設するのは全国的にも珍しい事例という。

 「税務署から、相続税の納税猶予が適用されると連絡が来た時はほっとした」と話すのは園主の和田礼子さん。先祖代々引き継がれてきた農地を守っていきたい気持ちはあったが、義父から農地を相続した後、自治体職員として働く夫と農業を続けていくには不安もあった。そんな時にJAはだのの研修を受け、開園を決意した。

交流会


 丹沢の山並みを望む農園の各所には、「名水百選」にも選ばれた水が張り巡らされていることが自慢の一つだ。募集した48区画は、開園時にはすべて契約が成立し、近所のマンションに住む親子連れや保育園の園児たち、地元の会社員らが農作業を楽しんでいる。開園を記念した交流会では桜の花の塩漬けが入ったおにぎりや、自家製の梅酒が参加者に好評だったという。

 「普通に農業をするよりも、人に教える大変さはある。でも農家ならではの知恵を伝えることで喜んでくれる人がいるし、何よりも人生が豊かになった」と和田さんはほほ笑む。

危機感


 JAはだの営農部の山岸一章部長は「チラシなどを配布してはいるが、生産緑地についての認識はまだ広がっていない。体験型農園という選択肢もあることを知ってもらい、この取り組みが広がってくれれば」と期待を込める。

 「放っておけば都市農業はなくなってしまう」と危機感をあらわにするのは県農業協同組合中央会農政地域対策部。担当者は「特定生産緑地を選択してもらえるよう、制度の周知を徹底していく」と話す。

 JAグループ神奈川では、兼業や小規模の農家でも農業を続けていけるようさまざまな支援策を展開。県内各所にファーマーズマーケット(直売所)を開設することで、出荷の規格が厳しい市場には出せない農家の販路を確保。高額な農機のレンタルサービスなど、各JAで支援を行っている。「生産緑地で農業を行う組合員には大きな選択が迫っている。一度失われた農地は元には戻らない。税制の問題もしっかり理解し、慎重に検討してほしい」


シェアする