1. ホーム
  2. 経済
  3. どうなる生産緑地(上) 迫る「22年問題」に懸念

どうなる生産緑地(上) 迫る「22年問題」に懸念

経済 神奈川新聞  2018年05月26日 16:26

5月3日オープンしたアグリメディアのシェア畑「シェアファーム二俣川」(横浜市旭区、同社提供)
5月3日オープンしたアグリメディアのシェア畑「シェアファーム二俣川」(横浜市旭区、同社提供)

 都市部の農地が大量に宅地化され、不動産が値下がりし、空き家が急増する-営農継続などを条件に税が軽減される「生産緑地」。全体の8割が優遇期間(30年)の満了を迎えるとみられる2022年が迫り、農業関係者や不動産業界を中心に懸念が高まっている。近年、都市農業の価値が見直される中、国は農地を保全するための法整備を急ぎ、農家の個別ニーズに応えるための体制を整備する企業も。県内生産緑地の行方を追った。
 

活用法


 「都市と農業をつなぐ」をコンセプトに、都市住民向けの畑のレンタルサービス「シェア畑」を手掛けるアグリメディア(東京都)。「農業に触れたい」というニーズをつかみ順調に成長。県内では横浜、川崎市を中心に約30カ所を展開する。

 同社は今、生産緑地を貸し借りしやすくする新法案を巡る国会の動向を見据えながら、新規開設を強化している。今秋までに全国で90農園、売上高8億円規模への拡大を目指す計画だ。

 地権者からの問い合わせ件数が増える一方で、自らが持つ土地の条件を把握していないケースも多いという。「まずは農地の状態を確認してもらい、その上で効果的な活用法を一緒に考えられれば」と担当者は話す。
 

法整備


 生産緑地地区制度は1992年、市街地の良好な生活環境保全を目的にスタートした。30年間営農を続けることなどを条件に管轄自治体が指定。地権者は固定資産税の優遇や相続税の納税猶予の特例を受けられる。

 高齢化や後継者不足を背景に営農を断念するケースが増える中で浮上した「2022年問題」。対策を検討していた国土交通省は昨年、生産緑地法を改正。営農継続意向のある農家が引き続き税制上の優遇を受けられるよう、新たに「特定生産緑地」が創設された。

 条例で面積要件を500平方メートルから300平方メートルに引き下げることなども可能になり、自治体は農地の保全のための対応を加速させている。横浜、川崎市などが面積要件を引き下げたほか、県は18年度、営農に貢献する設備の整備などに対して「都市農業推進事業費」を創設した。
 

選択肢


 特に企業が注目するのは、農地を貸借しやすくする新たな仕組みだ。今国会に提出された新法が成立すると、企業を含む生産者が事業計画を市町村に提出し、認定されれば生産緑地の賃借が可能になる。

 アグリメディアなどと共同で生産緑地活用についてのセミナーを行っている小田急不動産(東京都)は、農業を続けられない沿線の地権者への提案としてアパート建設、駐車場などのメニューをそろえる。

 しかし、同社の担当者は「いたずらに宅地化を進めるのではなく、個別の事情に応じて適切な活用法を提案したい。農地の保護という意味でも、貸農園は選択肢の一つとして有効なのでは」と話す。

 浜銀総合研究所調査部の湯口勉産業調査室長は「1992年の生産緑地指定の際、指定を選ばなかった土地の多くが賃貸住宅となり、需給バランスが悪化した。今回も賃貸住宅が選択肢の一つとなるが、市場はすでに多くの地域で供給過剰状態にあり、需要も伸びにくくなっていることに注意が必要だ」と指摘。その上で、「営農が継続できれば良いが、継承者の目処がついていない地権者は難しい選択を迫られるだろう」との見方を示している。

 ◆生産緑地法改正 都市農業振興基本計画に基づき、2017年4月に成立した「都市緑地法等の一部を改正する法律」の中で改正された。営農継続意向のある農家が引き続き税制上の優遇を受けられる「特定生産緑地指定制度」の創設、生産緑地地区の面積要件を条例で300平方メートルまで引き下げ可能にした面積要件の緩和、生産緑地地区に設置可能な建築物として、農産物などの加工施設、直売所、農家レストランを追加した「建築規制の緩和」の3点からなる。「特定生産緑地」を選択すれば、10年間税制上の優遇措置が受けられ、その後も繰り返し10年の延長ができる。


シェアする