1. ホーム
  2. 時代の正体
  3. 時代の正体〈600〉改憲のための改憲は愚

憲法学者・南野森さん(下)合区と教育
時代の正体〈600〉改憲のための改憲は愚

時代の正体 神奈川新聞  2018年05月19日 11:00

「憲法を改正しなくても、法律で参院議員の定数を変更するなどすれば、合区を解消できる」と語る南野森さん
「憲法を改正しなくても、法律で参院議員の定数を変更するなどすれば、合区を解消できる」と語る南野森さん

【時代の正体取材班=田崎 基】安倍晋三首相や自民党が掲げる改憲4項目には「9条に自衛隊を明記」「緊急事態条項の創設」「合区の解消」「教育の充実・強化」がある。憲法学者の南野森・九州大教授はこれらの条項もまた通底して「改憲のために」項目として挙げているように感じるという。


合区の解消


 この問題も憲法を改正しなくても、法律で参院議員の定数を変更するなどすれば、合区を解消できる。

 ただ最高裁判所の考え方を拒否し、「一票の格差」を犠牲にしてでも「都道府県代表という性質」を追求するなら、憲法改正は正しい手段だ。しかしそれを政治的に選択してよいのか、私には疑問だ。

 私は一票の格差を正していくべきだと考えているので、最高裁の判決に従い合区を導入していくべきだと思っている。この考えに立つと、いま自民党が考えている「合区解消」の条文案である都道府県代表というのは違和感がある。

 「合区」の問題は、憲法43条1項に衆参いずれの議院も「全国民を代表する」議員で組織する、と書いてあるところに起点がある。

 しかし現実には、議員は地元の代表、都道府県代表だと考える人が多く、例えば、新幹線の駅を地元に作ってくれる議員が偉い、などと言われることがある。新幹線に限らず、各地で必要性に疑問符が付く公共工事が生み出されてきた。「地元の意見を代表する」ということが強調されると、そうしたことになってしまう。

 しかし憲法43条は、そうではなく、国会議員はどこから選ばれようが日本全国の代表なんだ、ということを定めている。だから合区というのはまさにその流れで導入された選挙制度だと言える。鳥取県と島根県から参院議員が1人ずつ選出されなくともいいではないか、という話になる。

 こう考える私は合区禁止のための憲法改正には政治論として反対の立場をとる。現状でも過度に地元代表的な意識の強いこの国で、それをさらに強めるような改正をわざわざする必要はない。

 ただ憲法論としてはどちらも可能だ。それは国民の選択だろう。都道府県から参院議員が1人ずつ選出された方がいいと考えるのであれば、参議院の性格を「都道府県代表」とする議論をすればいい。

 ただそうする場合、二院制の問題を考慮する必要がある。本来、上院と下院では性格が異なる。しかし日本はほぼ同じだ。同じ党派構成になるため「カーボンコピー」などと批判され独自の存在意義があまりない。


南野森さん
南野森さん

 今後も二院制を維持し、参議院を廃止しない、しかし参議院の独自性を出す、そして一票の格差も解消したいと言うのであれば、これは抜本的な制度改正の議論が必要になる。

 都道府県代表として位置付けるにしても憲法43条などの参議院の性格の部分に手を付けなければならないので、二院制の形を根本から変えることになる。つまり合区を解消するというのは、参議院の位置付け、性格、そして権限を根本的に見直すこととセットでなければならない。

この記事は有料会員限定です。

月額980円で有料記事読み放題/100円で24時間読み放題のコースも。詳しくはこちら


シェアする