18日に公表された住宅地の公示地価には、自然豊かな住環境以上に交通の利便性を重視する消費者の志向が如実に表れた。マーケットの中核を成す共働き世帯は、自宅をオフィスに近づける「職住近接」に傾く。都市部は商業地としての発展も相まって、地価高騰が止まらない様相を呈している。
市区町村別の平均変動率で2・7%と高い伸びを示した横浜市中区。新市庁舎がそびえ立つ「北仲通地区」は再開発に沸く。まだ駐車場が目立つ一角で今月、大型複合マンションの入居が始まった。
地上58階建ての「ザ・タワー横浜北仲」は総戸数が1100戸を超す。坪当たりの単価は横浜中心部としては割安感があったとはいえ、1戸の販売価格は平均8760万円、最高で8億円に達した。
それでも購入希望者が相次ぎ、2017年の分譲開始から1年足らずで完売した。物件竣工(しゅんこう)までに売り切るのが難しくなったマンション業界にあって、「通常なら数年がかり」(関係者)という超大型案件の「スピード決着」は驚きを持って受け止められた。
評判を呼んだ理由の一つは、みなとみらい線馬車道駅に直結した立地にある。
「横浜市内に職場を構えるお客さまだけでなく、電車で都内に通勤する共働きの夫妻からも支持された」
販売を手掛けた三井不動産レジデンシャル(東京都)の担当者はそう話す。すぐ隣の区画で別のデベロッパーが計画するマンションにも、高い関心が寄せられている。
交通アクセスを最優先に物件を選ぶ。こうしたトレンドは今後も続きそうだ。
目立たぬ路線にも脚光
利便性に重きを置く潮流を色濃く反映したスポットもある。