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憲法学者・南野森さん(上)9条と自衛隊 
時代の正体〈598〉安倍改憲「変わらない」という嘘

時代の正体 神奈川新聞  2018年05月17日 10:43

みなみの・しげる 京都市生まれ、1994年東大法学部卒、同大学院博士課程、パリ第10大博士課程を経て、2002年九州大助教授、14年から現職。編著に「憲法学の世界」(日本評論社)、共著に「憲法主義 条文には書かれていない本質」(PHP研究所)ほか。
みなみの・しげる 京都市生まれ、1994年東大法学部卒、同大学院博士課程、パリ第10大博士課程を経て、2002年九州大助教授、14年から現職。編著に「憲法学の世界」(日本評論社)、共著に「憲法主義 条文には書かれていない本質」(PHP研究所)ほか。

【時代の正体取材班=田崎 基】改憲派市民団体が主催する5月3日の憲法集会で安倍晋三首相は繰り返し「憲法改正」を訴えた。自民党は足並みをそろえて条文案を示す。憲法学者の南野森・九州大教授は欺瞞(ぎまん)的説明を前に警鐘を鳴らす。「安倍首相の言う『何も変わらない』という嘘(うそ)にだまされてはいけない」


 安倍首相は「9条に自衛隊を書くだけであって何も変わらない」「権限も性質も変わらない」と言っているが、大間違いだ。

 憲法9条は、2項の「戦力不保持」規定によって曲がりなりにも自衛隊をコントロールしてきたという歴史が日本にはある。そして幸いにも戦後70年余りうまくやってこられた。

 政府の解釈では、自衛隊は戦力でも軍隊でもない以上、攻撃的な兵器、例えば大陸間弾道ミサイルなどは持てないし、「自衛のための必要最小限度の実力」を超えれば違憲になるという言い方で、予算上も、権限上も歯止めをかけてきた。その典型が「集団的自衛権は行使できない」という歯止めであった。

瀬戸際


 ところが安倍政権は2014年7月の閣議決定でこれを変更した。その安倍首相がいま自衛隊を正面から憲法に明記しようと言っている。しかも「その結果、何も変わらない」とも言う。これには非常に注意しなければいけない。

 安倍政権は「専守防衛を越えつつあるのではないか」との疑念を抱かせることを次々に展開している。武器輸出三原則はいつの間にか「防衛装備移転三原則」と名を変え外国に武器を売ろうとし、護衛艦を空母化することも考えている。防衛大綱の見直しでは敵基地攻撃能力さえも焦点となっている。徐々に自衛隊が「普通の軍隊」化していると言っていいだろう。

 私は自衛隊を「戦力」ではないとするこれまでの政府解釈は瀬戸際にきていると考えている。どうすべきか。選択肢は二つある。

 一つは、9条2項の「戦力不保持」という規定を削除し、軍隊の保有を規定する。必要があれば外国へも出て行き、諸外国と共に武力行使を行う。そういう「普通の」軍隊を持つ「普通の」国になる、という方法。外国から見ても分かりやすい解決策ではある。

 もう一つは、今まで通り、「戦力不保持」という9条2項を維持し、その下でぎりぎりだが、自衛隊を「自衛のための必要最小限度の実力」にとどめるという努力を続けていくという、「日本独特」の方法だ。

 この二つの選択肢は、いずれもそれなりに筋が通っていると思う。

 しかし安倍首相は17年5月3日に突然、いずれとも異なる「9条1項と2項を残したまま自衛隊を憲法に明記する」という改憲案を示した。この提案は、9条維持と自衛隊明記との「いいとこ取り」のようで直感的には悪くなさそうにも思えるかもしれないが、実は大変なくせものだと思う。

虚構


 まず「何も変わらない」というのはあり得ない。国民が「自衛隊の権限や軍備が拡大したり、海外で武力行使したりするようになっても良い」と納得した上でその改憲案に賛成するのであれば、国民の決定であるから構わない。しかし、そうなる可能性が大いにあることを隠し「何も変わらない」という安倍首相の説明には、国民を欺こうとする嘘がある。そもそも本当に何も変わらないのであれば書き込む必要などない。


「自衛隊明記で『何も変わらない』という安倍首相の説明には国民を欺こうとする嘘がある」と批判する南野さん
「自衛隊明記で『何も変わらない』という安倍首相の説明には国民を欺こうとする嘘がある」と批判する南野さん

 安倍首相は感情に訴えるように「自衛隊が合憲か違憲か分からなくて気の毒だ」などと言うが、これも理解に苦しむ。書き方にもよるが、自衛隊を憲法に書いたところで、自衛隊の権限や性質次第では9条2項の「戦力」になり、従って違憲の疑義が出る可能性がある。逆に、安倍首相の言うように「自衛隊違憲論を一掃する」ように書くなら、

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