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やまゆり園 事件考
死刑と命(4)処理される死の「正義」 実力行使の絞首刑

社会 神奈川新聞  2020年03月18日 05:00

東京拘置所刑場の「執行室」。2010年8月にメディアに公開された
東京拘置所刑場の「執行室」。2010年8月にメディアに公開された

 神奈川県立障害者施設「津久井やまゆり園」(相模原市)の入所者ら45人を殺傷した植松聖被告(30)に16日、死刑判決が言い渡された。事件は派生的に「生きるに値しない命はあるのか」という根源的な問いを投げかけた。ならば、刑罰として被告の生命を奪う極刑は、どう受け止めればいいのか。連載の最終回。(川島 秀宜)

死刑と命(1)「上等だ、てめえ」遺族の宣告、被告の激高
死刑と命(2)無価値の命はない…「被告の命は?」葛藤
死刑と命(3)被告の命は「生きるに値しない」のか

 幹部職員が挙手し、合図を送った。ガラス窓越しの別室で、刑務官3人が、それぞれの正面にあるレバーを同時に引く。「バーン」。踏み板が抜けるとどろきが、張り詰めた静寂を破った。瞬間、囚人は眼前から消えた。天井から垂れ下がった絞縄(こうじょう)が、落下の反動でぶらんぶらんと揺れ動いていた。

 49年前、東京拘置所(東京都葛飾区)の刑場。初冬の肌寒い朝、強盗殺人犯の男に死刑が執行された。任官2年目の刑務官だった弁護士の野口善国(73)は、その始終を鮮明に覚えている。「目の前で人が死ぬのを初めて見た。忘れられませんよ」


野口善国さん
野口善国さん

 きしむ絞縄を制止させようと、両手を伸ばした野口は、階下をのぞき込んだ。立ち会いの医務官が男の上着をはだけ、聴診器を当てていた。胸元がどくんどくんと脈動しているのがわかった。医務官は救命しない。絶命を見届けるのが職務だった。「いまならまだ助かるのに」。野口は、あべこべの世界に戸惑った。

 男は執行直前、「お世話になりました」と幹部職員に握手を求めたという。生命の温もりは、陰り、消えた。「死刑は法に基づいた正義という。でも、」。野口は「正義」を疑う。「実際は人が人を殺していた」

 法務省は2010年、東京拘置所の刑場を初めてメディアに公開した。神奈川新聞記者ら21人が取材した。立ち会った職員の説明も踏まえると、死刑宣告から執行までの工程はこうだ。

 刑場は六つの部屋に分かれている。

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