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キャッシュレス戦国時代 地銀の挑戦
横浜銀行「はまPay」 地域に活路

神奈川新聞  2020年03月16日 17:30


 クレジットカードや交通系ICカード、スマートフォン用アプリなどを利用して、現金なしで買い物などの支払いができるキャッシュレス決済。消費税増税に伴うポイント還元制度も追い風に広がりを見せる一方、サービスを提供する事業者が林立し、しのぎを削る”キャッシュレス戦国時代”の様相も呈している。その中で、地銀ならではの特性を生かしてその荒波に立ち向かうのが、横浜銀行の「はまPay」だ。預金者の口座を持つ銀行であり、地域密着の金融サービスを提供している強みを生かし、一層の普及に力を入れている。横浜の商店街や商業施設、大学生らとも連携したはまPayの現状を紹介する。

大手決済サービスに対抗するには

 「ポイント還元やキャッシュバック、CMといった施策を大々的に展開する他のキャッシュレス決済に対抗するのは簡単ではない。横浜銀行でないとできないサービスが必要だ」。横浜市内の商店街や同行の関係者らが居並ぶ中で、学生たちは臆することなく力説した。


横国大で開かれた学生らによる報告会
横国大で開かれた学生らによる報告会

 1月下旬、横浜国立大学(横浜市保土ケ谷区)で開かれたグループ課題報告会。同大経営学部1年生の8グループが、カリキュラムの一環としてはまPayの普及策について発表した。学生たちは19年秋から、「元町ショッピングストリート(同市中区)を活性化しながら、はまPayを普及させる提案をする」課題に挑戦。同商店街のフィールドワークなどをしながら、アイデアを練っていった。

 報告会で最優秀に輝いたのは、吉田匠吾さん(19)、西山咲枝さん(20)、塚本理紗子さん(19)のチーム。課題が出た最初の印象について、吉田さんは「最初調べたときは、競合するサービスと比べた強みが見えてこなかった」と振り返る。中間発表はポイント還元に関連する企画だったというが、「銀行ならではのものを」と方針を転換。銀行の業務について広く調べていくうちに、ローン業務に行き当たった。


報告会で学生が発表したポスター案
報告会で学生が発表したポスター案

 これを関連付ければ、同行にしかできないサービスになるのでは―。そう考えて、吉田さんたちはこんな提案をまとめた。「はまPayで月5万円以上買い物をしたユーザーは、その月以降の住宅ローン金利が0.01%下がるサービスを提供してはどうか」。同行HPのローンシュミレーションページも活用し、銀行側に損失が出ない額を試算した。

 他のチームからは、「イベントで売る商品を、端数がある現金払いには不便な金額に設定し、キャッシュレスの利便性を体感する」「スマートフォンがATMに取って代わる時代の到来をイメージした印象的な動画やポスターを展開する」といったアイデアが。提案を聞いた西山さんは「自分たちの発表だけ毛色が違い、大丈夫なのかと不安だった」と話す。

「銀行内では出てこないアイデア」

 それでも、「銀行がキャッシュレス決済で生き残るための方向性を端的に指摘している」と、西山さんたちの発表が最優秀賞となった。同行も「住宅ローンの利率について、ちゃんと収支を計算していたのがすごい。行内の議論では出てこないアイデアで、勉強になった」と舌を巻く。チームメートの塚本さんは「気軽に意見が交わせるチームで、提案をつくり上げるモチベーションにつながった」と喜ぶ。


横国大の報告会で最優秀賞に輝いた(左から)吉田さん、西山さん、塚本さん
横国大の報告会で最優秀賞に輝いた(左から)吉田さん、西山さん、塚本さん

 横浜市外出身の3人。発表を通じて、横浜という地域、そして金融機関の役割について考えるようになったという。「今、住んでいる地域の課題に取り組むことで、横浜のことを知るきっかけになった」と吉田さん。銀行についても「どんな業務があるのか、知らないことが多かったが、この課題を通じて学ぶことができた」。お金を預かるだけでなく、地域に融資する存在。「お金を扱う、地域にとって不可欠な機関であることがわかった」と力を込めた。

ファンを増やすことに活路を

 キャッシュレス決済の戦国時代に、地域に根付く金融機関は何を目指すべきか。企画に関わった同大の田名部元成教授は、「早い者勝ちになりやすいキャッシュレス決済の世界は大手が強いが、横浜銀行と地域との関わりを考えたとき、利用者に共感してもらうことで、はまPayを使ってもらえる可能性はある」と指摘する。


キャッシュレス決済の展望について語る田名部教授
キャッシュレス決済の展望について語る田名部教授

 数多くの決済手段の中から、何をどんな理由で選ぶのか、日常生活の中で問われる時代になった。利便性で決める人もいるだろうが、「これが好き」という価値観へのコミットメントを大切にする人もいる。そうしたファンを増やしていくことに、はまPayの活路があるのではないか――。田名部教授はそう見据えている。

はまPay活用、まちぐるみで機運

 地元商業施設や商店街との連携を通じ、はまPayが使える店舗も着実に増えている。


人気キャラクター「はまペン」も登場した新規登録キャンペーン。「はまPay」普及のため、県内各地で実施されている
人気キャラクター「はまペン」も登場した新規登録キャンペーン。「はまPay」普及のため、県内各地で実施されている

 2月下旬から、ランドマークプラザ・クイーンズタワーA(横浜市西区)内の約160店舗が取り扱いを開始。一度に加わる店舗数としては最多といい、同行担当者は「ほぼ全店で使えるようになったことは非常に大きい」と捉える。これに合わせて、買い物客向けの新規登録キャンペーンも開催。登録した女性(34)は「横浜にはすごく愛着がある。口座と直結しているのが便利だし、使ってみようかな」と話す。

 横浜ランドマークタワーを手がけた三菱地所の竹田徹・横浜支店長は、「訪日外国人客を迎えるには、キャッシュレス決済の導入は大前提で、全国の商業施設で対応を進めている。地元の商店街からも、はまPayをまちぐるみで盛り上げていく機運も感じられた」と、導入の理由を説明する。


はまPayへの期待について語る竹田支店長
はまPayへの期待について語る竹田支店長

 地元に根差した金融機関のキャッシュレス決済普及に、「可能な限り協力したい」と竹田支店長。「横浜市民・神奈川県民の多くが横浜銀行に口座を持っており、はまPayを使うようになる素地がある。地元のコアな顧客をしっかりつかむのは、商業施設を運営する上で必須」と話す。

 今後は、訪日外国人など同行の口座を持っていない人をどう取り込むかが鍵になると指摘。「観光振興策と一体化し、イベントなどの予約・決済も全てはまPayでできるようになれば面白い」と展望している。


編集・制作=神奈川新聞社デジタルビジネス部
提供=横浜銀行


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