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マーシャル諸島の若者へ手紙 互い知り平和な未来へ

話題 神奈川新聞  2020年03月16日 05:00

 神奈川学園中学校(横浜市神奈川区)の1年生が、約4500キロ離れた太平洋の島しょ国・マーシャル諸島の同世代に手紙を書いた。米国が1954年に同諸島ビキニ環礁で行った水爆実験で被ばくした日本漁船「第五福竜丸」などを題材にしてきた平和学習の一環。平和の始まりは等身大の互いを知ることから-。未来の担い手である若者同士が、海を越えつながろうとしている。


手紙の内容を考える生徒らと中原さん(右側)=1月21日、神奈川学園中学校
手紙の内容を考える生徒らと中原さん(右側)=1月21日、神奈川学園中学校

 「一方的に質問されたら相手はどう思うかな。質問の理由や、日本の状況を伝えた上で聞こう」。1月30日、教員に導かれつつ、生徒らが手紙に盛り込む質問を考えていた。

 宛先は同諸島の首都マジュロにある私立学校。山田志乃さん(13)のグループは「何か困っていることはありますか」という質問を挙げた。自分たちは宿題の多さに苦戦しているといい、「困っていることも違うんじゃないかな。自分たちが暮らしている国だけでなく、ほかの国も知ることに意味があると思う」。

 1年生約190人は本年度、第五福竜丸に加え、同じ核実験で被害を受けたマーシャル諸島にも着目。放射性物質を含む「死の灰」が降り注いだ同諸島ロンゲラップ島の人々は、別の島に移住を余儀なくされた。生徒らは、現地の人々を撮影してきたフォトジャーナリスト島田興生さんらが手掛けた英語版の本を翻訳し、視座を広げてきた。

 島田さんの仲介で、約20年前から同諸島に足を運び、核実験の影響と暮らしの関わりを研究してきた総合地球環境学研究所(京都市)の中原聖乃さんに手紙を届けてもらうことに。同学園の小川輝光教諭は「過去に学ぶだけでなく、手紙を通じて互いを知り、未来の平和に向けて自分に何ができるかを考えてほしい」と狙いを話す。

 手紙を書く前には中原さんが講演し、通り一遍ではない現地の姿も学んだ。ロンゲラップの除染が不十分なため帰郷への願いと不安が交錯する状況下、移住先の無人島を開墾し、暮らしを復活させていくたくましさ。一方で、同諸島の財政が米国の援助に大きく依存していることや、都市部の生活様式が「アメリカ的」になっている実態─。

 何を投げ掛けて、どんなつながりが持てるか。生徒たちは模索の末、全5クラスで30通の手紙にまとめた。「放課後は何をしてますか?」「私たちはまだ将来の夢を決めてません。あなたは?」「ロンゲラップが安全になったら、行ってみたいですか?」─。身近な話題から核被害の問題まで、思いが詰まった英語の手紙が2月、完成した。

 手紙は当初、2月下旬~3月上旬に同諸島を訪問する中原さんが手渡す予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大により渡航は延期となり、今月6日に発送した。中原さんは返事もお願いしたい考えで、「現地の人たちが置かれた状況をより深く知るきっかけにしてほしい」としている。


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