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やまゆり園 事件考
共生を求めて(2)「和希君 一緒に遊ぼう」

社会 神奈川新聞  2020年03月14日 20:00

 「カズ、出発するよ」

 光菅悦子さん(50)は長男和希君(8)を車に乗せて川崎市内の自宅を出た。2月中旬のこの日向かったのは、放課後の子どもの居場所になっているスペース。子どもたちと思う存分触れ合うためだ。その機会がほとんどない和希君にとって、週1回ペースで通う貴重な場だった。

■特別視はせず


子ども同士でドミノ倒しを楽しむ光菅和希君(右)と母の悦子さん=2月22日、川崎市内
子ども同士でドミノ倒しを楽しむ光菅和希君(右)と母の悦子さん=2月22日、川崎市内

 目的地の体育館に到着すると、既に遊んでいた子どもたちの輪の中に入った。

 「和希君、一緒に遊ぼう。まずはボールで」

 そう声を掛けてきた小学1年の女児と和希君、悦子さんが向き合った。女児が投げたボールを和希君は悦子さんの助けを借りながらキャッチし、投げ返した。

 「今度は和希君と体育館回りをしたい。体育館へようこそ。案内しましょう」

 おどけながら話す女児に、人工呼吸器を付けている和希君を特別視する雰囲気は全くなかった。

 3時間ほどを共に過ごした帰り際、悦子さんが和希君に尋ねた。

 「楽しかった?」

 「うん」

 和希君がそう答えると、悦子さんは続けた。

 「来週も来る?」

 「来るー」

 和希君は力いっぱい声を出した。

■学ぶ機会奪う


医療的ケアが欠かせない光菅和希君(右)のたんを吸引する母の悦子さん=2月22日、川崎市内
医療的ケアが欠かせない光菅和希君(右)のたんを吸引する母の悦子さん=2月22日、川崎市内

 和希君は就学前の2年間、川崎市麻生区の「柿の実幼稚園」に悦子さんが付き添う形で通った。同園は、重度障害や医療的ケアが必要な子を積極的に受け入れている。

 週2回ペースで通い、最初は呼吸器を不思議そうに見ていた園児たちも「一緒に遊ぼう」と誘ってくれた。同世代の子たちから刺激を受けて和希君の笑顔も増えた。運動会のリレーでは、悦子さんが和希君のバギーを押して100メートルのトラックを全力疾走した。

 小島澄人園長(65)は当時を振り返り、一日も早く小学校で受け入れるべきだと訴える。「子どもは同世代との関わりを通して多くのことを学ぶ。和希君だけではなく、健常の子の側も共に学ぶ機会を奪われている。幼稚園で受け入れることができたのだから、小学校でやれないはずはない」

 障害の有無にかかわらず共に学ぶインクルーシブな幼稚園での経験が、両親の背中を押した。「子どもは子どもの中で育つ」。そう確信して地域の学校を望んだ。2017年7月に始まった就学相談で、その意向を川崎市教育委員会に伝えた。明確に否定されることはなく、実現を信じて疑わなかった。ところが、入学直前の18年2月末になって突如「支援学校への就学が決まった」と説明された。寝耳に水だった。

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