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記者の視点=報道部・田中大樹
時代の正体〈595〉憲法の現場(5)公僕の奉仕 誰のため

時代の正体 神奈川新聞  2018年05月08日 02:00

横浜・みなとみらい21地区の高層ビル群近くを飛行する米空軍のCV22オスプレイ
横浜・みなとみらい21地区の高層ビル群近くを飛行する米空軍のCV22オスプレイ

横浜・みなとみらい21地区の高層ビル群近くを飛行する米空軍のCV22オスプレイ
横浜・みなとみらい21地区の高層ビル群近くを飛行する米空軍のCV22オスプレイ

 【時代の正体取材班=田中 大樹】港湾都市・横浜を象徴するみなとみらい21(MM21)地区の高層ビル群を横目に、異形の米軍機が飛行する。

 日本の空は一体、誰のものなのか。そう問わずにはいられない。

 4月5日、米空軍の輸送機CV22オスプレイ5機が横浜港の米軍施設「横浜ノースドック」(横浜市神奈川区)を離陸し、横田基地(東京都福生市など)へ向かった。5機が大型の輸送船でノースドックに到着したのは3日夕。防衛省南関東防衛局から県に情報が伝えられたのは、そのわずか7時間半前、横浜市へもほぼ同じ頃だった。

 自治体には住民の安全を守る責務がある。「どんな事情があったか分からないが、もう少し手前で、きちんとご連絡いただきたかった」。同市の林文子市長がそう苦言を呈したのは至極当然だった。

 米側との窓口となる同局に具体的な飛行スケジュールやルートを問い合わせても、「詳細は不明」と繰り返すばかり。米軍機の運用を把握し、丁寧な説明を通じて地元の不安を払拭(ふっしょく)するという職責を果たせていなかった。

 米軍がどんな作業をしているのか。米側から情報を得られず、職員がノースドックを望める場所から目視で確認するありさまだった。日本政府が安保・地位協定を金科玉条のように拝し、どれほど献身的に振る舞おうとも、米側は一顧だにしない。政府の姿は、もはや滑稽でさえあった。

 果たして5機は5日午前11時すぎ、機体をふわりと浮かせると徐々に高度を上げて加速し、重低音を残して一機、また一機と東京湾の南方へ姿を消した。

 オスプレイが既に配備された沖縄では大破する事故が起きた。その後もトラブルが相次ぎ、沖縄県民は日々、命の危険にさらされている。5機が向かった横田基地の周辺住民は今後、不安を抱えた生活を強いられる。そして、オスプレイ配備をどこか遠い世界の話だとやり過ごしてきたであろう私たちが暮らす首都圏上空の危険性が、いよいよ高まった。

 遠ざかる機影を眺めつつ、疑問が深まった。これほどの重大事、政府はいつ知ったのだろうか、と。

 その答えは、河野太郎外相の国会答弁で明らかになった。政府は主権者たる国民の安全よりも、地方自治よりも、米国からの要請を優先し、公表を遅らせていた。

 また一つ、根源的な問いが頭をもたげた。

 この国の公僕は一体、誰に奉仕しているのか。

命、自治、主権脅かす 米軍基地


 激しい雨音を遮り、轟(ごう)音(おん)が近づいてくる。低く垂れ込めた厚い雲の中から巨大な機体が姿を現し、爆音をまき散らしながら頭上をかすめた。米軍横田基地(東京都福生市など)に常駐するC130輸送機だ。

 「オスプレイが配備されると、さらに騒音が激しくなる。危険性も高まってしまう」。第9次横田基地公害訴訟原告団団長の福本道夫さん(68)が空を見上げた。


雨上がりの午後、米軍横田基地のフェンス沿いに立つ福本さん
雨上がりの午後、米軍横田基地のフェンス沿いに立つ福本さん

 4月5日午前11時半すぎ、横浜を飛び立った5機のCV22オスプレイは横田基地の南東から飛来すると、市街地を横切りながら旋回を繰り返し、滑走路に着陸した。悠々と飛行する姿は「ここがこれから訓練を積む場所だ。そう確認しているようでした」。

 5機は訓練を経て、夏ごろに正式配備される。今後は数年間で計10機と要員約450人という陣容が整備される見通しだ。2019年10月以降を予定していた配備が1年半以上も前倒しされたが、公表は横田到着のわずか2日前だった。

 4月4日の衆院外務委員会。河野太郎外相は横田配備について米側から3月16日に連絡があったと明かし、4月3日まで公表しなかった理由を「米側から調整が整うまでの間は控えるよう要請された」と答弁した。情報入手から18日間、政府は米側から求められるままに隠し続けていた。

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