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イノシシ捕獲で被害防げ 県、管理計画策定へ

社会 神奈川新聞  2018年05月07日 02:00

山中に設置されているおり。手前の通信機能付きカメラでイノシシの動向を監視している=葉山町
山中に設置されているおり。手前の通信機能付きカメラでイノシシの動向を監視している=葉山町

 県内で出没が相次ぐイノシシの抜本的対策として、県は2018年度、初の管理計画策定に向けた本格調査に乗り出した。近年になって出没が確認されるようになった三浦半島中部の二子山山系にカメラ付きの捕獲おりを設置。さらに、わなに掛かると自動通報する装置を試験導入する。人に危害を及ぼすこともあるだけに、県は「短期決戦でやらないと都市に出て来てしまう」と危機感を強めている。

 県では食害が深刻なシカについては年間の捕獲頭数を決めて対策を施してきたが、イノシシについては農作物への被害に焦点が当てられてきたこともあり、広域的な管理の視点を持っていなかったという。

 「なぜを含め、どこで被害が強く出ているのかというのを全県的な視点で科学的に調べていく」と県自然環境保全課。18年度予算では関連事業費として652万円を計上した。

生息域拡大


 「手探りの状態」。調査を進めるかながわ鳥獣被害対策支援センターの担当者は眉を寄せる。イノシシの生息環境に変化が生じ始めたのは5年ほど前という。それまで丹沢山麓から大磯町まで分布を広げていたが、葉山町を中心とした二子山山系でも見られるようになった。

 多産多死と言われるイノシシは実数を把握しづらい。そもそも、元々いなかった地域になぜ分布を広げているのか。イノシシの生態に詳しい西日本農業研究センター鳥獣害対策技術グループ長の江口祐輔さんは「捕獲した後の処分に困って放してしまうケースは全国的にある。どこにいても同じ」と指摘。また、「何が原因かという議論に終始してしまっていることで被害対策が進まない現状がある」と警鐘を鳴らす。

試行錯誤


 試行錯誤が続く。昨年、山中の4カ所に監視カメラ付きのおりを設置。毎朝7時におりの様子が職員の元に届く仕組みだが、設置直後の昨秋や年明けには姿を見せていたものの、捕獲実績はゼロに終わった。

 現状、目撃例は二子山山系に限られるが、山を下れば住宅街があり、さらに北上すれば横浜の都市部、南下すれば三浦の農業地帯が控える。実際、02年に全国初となる「イノシシ条例」を施行した神戸市では観光地や住宅街にも頻繁に姿を見せ、年平均36・8件、負傷者22・6人の人的被害が発生。県内でも16年に伊勢原市の男性が農作業中に襲われ、3週間のけがを負った。

 人的だけでなく、経済的被害への懸念もある。「放っておくと大変なことになるかもしれない。調査を進めて計画を作成、検証していきたい」。県は地元自治体や住民にも協力を求め、地域ぐるみで対策を進めていく考えだ。

農作物に被害、市街地への出没懸念


 県自然環境保全課によると、2016年度のイノシシによる農作物被害額は、前年度比5367万円増の8179万円。捕獲頭数も同984頭増の2504頭だった。

 「年によって増減はあるが、傾向としては上がってきている」と同課。各自治体でも、電気柵の設置でイノシシの侵入を防いだり、くくりわなや箱わなで捕獲に動いたりといった対策を打っている。

 管理計画の策定はこうした状況を捉えてのものだが、西日本農業研究センター鳥獣害対策技術グループ長の江口祐輔さんは数値目標を示した対策には否定的だ。「数字ありきの計画では捕りやすい所で捕ることにつながり、意味のない捕り方をしてしまう可能性がある。手負いのイノシシが増え、市街地に出てしまうことにもなる」と懸念する。

 イノシシは警戒心が強く、人の痕跡を認めると容易には近づかない。だが、安全だと分かれば環境適応力が高いため、より油が多く、栄養価の高い餌を確保できる市街地に定着してしまう恐れがある。

 イノシシを囲い込み、被害の拡大を防ぐためには地域ぐるみでの取り組みが何より重要という。例えば、周囲にえさ場がある状況ではいくら誘導してもおりには入らない。江口さんは「地域が動かないと被害ゼロにはつながらない。捕れば良いではなく、総合的な対策を立てないといけない」と求めている。


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