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記者の視点=報道部・田崎基
時代の正体〈591〉憲法の現場(1)高揚感の背後に矛盾

時代の正体 神奈川新聞  2018年05月03日 02:00

憲法改正の必要性を訴える櫻井よしこ氏(中央)=3月14日、東京・千代田区の憲政記念館
憲法改正の必要性を訴える櫻井よしこ氏(中央)=3月14日、東京・千代田区の憲政記念館

【時代の正体取材班=田崎 基】大願成就の時が迫り、高揚感が会場を満たしていた。壇上には日の丸が掲げられ、参加者全員が起立して唱和した「君が代」が地鳴りのように響き渡る。3月14日、東京・千代田区の憲政記念館。国内最大の右派団体「日本会議」の主導で発足した「美しい日本の憲法をつくる国民の会」の集会が始まった。

 共同代表でジャーナリストの櫻井よしこ氏が会場を右から左へと見渡すようにしてから語り始めた。

 「私たちは3年半ほど前に憲法改正賛同者署名活動を始めることを決めました」

 署名活動を始めた2014年10月以降、街頭宣伝を行い、集会を開催し、賛同する神社では正月になると初詣客にも署名を求めた。目標の1千万人に達し、大きな節目を迎えていた。

 櫻井氏は続けた。

 「1千万の署名というのは並大抵のことではございません。日本の現状を憂い、国際社会の現状を見て、なんとしてでもこの国をもう一度しっかりした国につくり替えなければならない。そのような思いで毎日努力した結果が1千万筆です」


日本会議の主導で発足した改憲派団体の集会。改憲に賛同する署名が1千万人集まったことが報告された=3月14日、東京・千代田区の憲政記念館
日本会議の主導で発足した改憲派団体の集会。改憲に賛同する署名が1千万人集まったことが報告された=3月14日、東京・千代田区の憲政記念館

 いざ発議があれば国民投票で可決に持ち込む、それだけの努力をしてきたし、その準備は万端なのだ、という参加者の万感を刺激するかのように、櫻井氏は畳み掛けた。

 「国民の命を守り、生活を守り、国土を守り、平和を守る。そのために私たちは憲法改正に手を付けなければなりません」

 参加者の喝采を浴び、さらにこう力を込めた。

 「1千万人署名に込められた心を大事なものとして、ぜひ今年か来年のうちに憲法改正を発議し憲法改正を実現していきたい」

 すべては予定通りに進んでいるという自信に満ちあふれていた。だが、改憲案を巡る安倍晋三首相の提案と「国民の会」の間に横たわる大きな矛盾から、私は目をそらすわけにはいかなかった。

 1千万人の署名用紙には「9条2項を改正し自衛隊を明記する」と書かれていたが、安倍首相は「9条1項2項を変えずに自衛隊を明記する」という改憲案を主張している。9条2項を変えるのか、変えないのか。その隔たりは明らかだった。

 櫻井氏は壇上でこう語っていた。「変えることができるところから、変えていかなければならないと思います」

 会場は再び盛大な拍手に包まれた。


「美しい日本の憲法をつくる国民の会」が配布していた署名用紙に記載されていた「改正内容案」7項目。憲法9条2項を改正し「自衛隊を明記」することをうたっている
「美しい日本の憲法をつくる国民の会」が配布していた署名用紙に記載されていた「改正内容案」7項目。憲法9条2項を改正し「自衛隊を明記」することをうたっている

国の根幹破壊許すな 安倍首相改憲案



 国会前は安倍晋三政権への抗議デモに参加する人たちであふれかえっていた。

 公文書の改ざんが明らかになった森友学園問題、「首相案件」と記されたメモが出てきた加計学園問題に怒りの声が噴出していた。「美しい日本の憲法をつくる国民の会」が1千万人署名の達成を報告する集会を開いてからちょうど1カ月後の4月14日のことだった。


安倍政権への怒りの声を上げるデモ参加者で埋め尽くされた国会前 =4月14日、東京・千代田区
安倍政権への怒りの声を上げるデモ参加者で埋め尽くされた国会前 =4月14日、東京・千代田区

 狭い歩道へと押し込められていたデモの参加者たちの怒声と視線が国会へと向けられ、熱気は頂点に達しようとしていた。

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