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さがみ信用金庫・秋葉勝彦氏
【金融最前線】県内信金理事長に聞く(5)資産生かし観光振興

経済 神奈川新聞  2018年04月28日 10:25

あきば・かつひこ 1974年法政大学卒、同年小田原信用金庫(現さがみ信用金庫)入庫。2007年常務理事、13年専務理事を経て16年から理事長。67歳。小田原市出身。
あきば・かつひこ 1974年法政大学卒、同年小田原信用金庫(現さがみ信用金庫)入庫。2007年常務理事、13年専務理事を経て16年から理事長。67歳。小田原市出身。

 -営業地域の経済状況は。

 「小田原は富士フイルムや日立製作所など大手企業の工場が複数あり、かつてはピラミッドのように構成された下請けによる工業が経済を支え、漁業も栄えていた。だが現在は、富士フイルムは化粧品などにシフトし、日立も海外展開しており、地域内の下請けとの取引はほとんどない。工業が衰退する一方、比重が高まるのは観光関連産業だ。箱根というブランドのお膝元で、かまぼこ業者などは箱根にお土産を納品して潤う。実際に観光関連企業との取引が増えている」

 -観光産業がより伸びるために必要なことは。

 「今後の小田原を考えると、人口は減少し、大手企業がいなくなったため若者は地域外で就職するだろう。東京や横浜の大学に行き、そこで就職する例も多い。そうなると、雇用維持のためにも観光に力を入れざるを得ない。小田原には北条時代からの歴史があり、歴史的資産が多い。それを生かし、箱根との相乗効果により観光客を呼び込むことが求められる」

 -信用金庫としても観光に力を入れている。

 「法人の融資先として一番いいのは旅館だ。例えばトイレや浴室をきれいにし、場合によっては露天風呂付きの個室にしたり、2部屋を一つにしたりして付加価値を付ける。かつて旅館やホテルは企業の宴会ができればいいという側面があったが、現在は少人数や女性グループが楽しめるよう、部屋がきれいで風呂も料理も楽しめることが重要だ。当金庫では、これまで多くの例を通して観光支援のノウハウを学んできた」

 -人手不足の問題が深刻だ。

 「基本的にどの業種も厳しい。小田原では、創業より廃業が多い。少し前までは、後継者の不在などによるものが多かったが、この4、5年では人手不足が要因の例が急激に増え、非常に深刻だ。観光業については地域の高校に声を掛けて、夏休みに旅館やホテルでのインターンシップを実施している。いずれにせよ、大学を出たら地元にUターンする仕組みがないと厳しいだろう」

 -観光業以外で有望な産業は。

 「最先端のものづくりだろう。昔から、小田原には優れた技術がある。箱根細工に始まり、鋳物やダイカスト製品では、世界に負けない技術を持っている企業もある。そうした技術と最先端の研究成果を融合し、新たな産業ができないか。実際、そうして生き残る企業も生まれている。関東学院大学が小田原にものづくりの研究拠点をつくろうと動いており、こうした研究機関とも連携できれば」

 -低金利環境が続く。

 「マイナス金利が導入され、経費を縮めて店舗を統合するなど、収益が減っても耐えられる態勢づくりをかなり進めた。今後も金融緩和は続きそうで覚悟はしている。金利競争の中で融資金利を下げなければいけないこともある。状況が反転したときに本当に企業を助けてくれるのはどこかを知ってもらうためにも、ここで耐えねば」

 -逆風だが打つ手は。

 「金融庁がリレーションシップバンキング(地域密着型金融)を提唱し、各金融機関が中小企業診断士を育成している。当金庫はそのずっと以前の30年前から、いずれコンサルティングが重要になるだろうと中小企業診断士を抱え、取り組んできた。地域の企業が支援により稼げるようになれば、雇用や設備投資も進む。そのために知恵を出そうと地域元気創造部をつくり、廃業の原因調査や、商工会議所と創業セミナーを共催してきた。これからも信用金庫は地域と一体だからだ」

さがみ信用金庫
 1925年創立。本部は小田原市。小田原・南足柄・秦野市、松田・山北・大井・開成・中井・箱根・湯河原・真鶴・二宮町に34店舗。2017年3月末の貸出金残高は3091億5300万円、預金残高は6950億6900万円。


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