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〈時代の正体〉平和への一歩に誇り 横浜の朝鮮学校生が歓声

時代の正体 神奈川新聞  2018年04月28日 08:33

板門店のライブ映像に歓声を上げる朝鮮学校生ら=神奈川朝鮮中高級学校
板門店のライブ映像に歓声を上げる朝鮮学校生ら=神奈川朝鮮中高級学校

【時代の正体取材班=石橋 学】北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が軍事境界線を越え、韓国の文在寅大統領と握手した瞬間、歓声が上がった。在日朝鮮人の子どもたちが通う神奈川朝鮮中高級学校(横浜市神奈川区)。朝鮮半島情勢のあおりをいわれもなく受け、とりわけ差別にさらされてきた生徒の口から語られたのは、真っすぐな平和の希求、未来への希望だった。

軍事境界線ないも同然


 午前9時半、中高生約160人が見詰めるスクリーンのライブ映像が、手を取り38度線をまたいでいく2人の指導者の姿を伝えた。

 「もう、軍事境界線はないも同然だ」

 歓声と拍手、感涙する先生たちの「マンセー(万歳)」の叫びに包まれた体育館で高校3年の男子生徒(17)は目を輝かせた。

 昨年、全国の朝高生の訪問団に選ばれ、祖国の地を踏んだ。板門店を訪れ、韓国側の兵士と向き合った。「すごく距離を感じた」。休戦状態のまま終結をみない朝鮮戦争の現実だった。

 「でもきょう2人が同じ言葉で話し合っているのを見て、やっぱり一つになるべき民族なんだ、と。分断の象徴が平和の象徴になった」

 文大統領と同じ言葉を口にし、かの地にはせた思いを重ねた。

 体育館には統一旗が持ち込まれ、学校が用意した缶ジュースとチョコパイが配られた。ささやかだが、万感がこもったのエール。

 「これからは一つの朝鮮、一つの民族として羽ばたいていく時代。君たちのために祝杯を挙げよう」
 
 金(キム)燦旭(チャヌク)校長(50)は生徒たちにそう語り掛けた。

 「自然に拍手が起きていたのは、それだけうれしかったということ。ずっと悪いニュースとしてしか取り上げられてこなかったから」

 理屈じゃない、わき上がるものを体で感じてほしかったと金校長は言う。

 「2000年の最初の南北首脳会談後に生まれ、いまの生徒は統一と言われても実感がない。ぜひ明るい未来として刻まれてほしい。朝鮮半島の統一は世界の平和につながる。よし、これから世界で活躍していくぞ、と」

心で知った民族


 在日4世で中学3年の男子生徒(14)は「世代的にすごく関心があったわけじゃないけど、いざ目にしたらワクワクしてきた。誇らしい気持ち」。自分も歴史的瞬間の当事者だと思えた。

 拉致問題や核・ミサイル開発をめぐり、あしざまに伝えるニュースに触れるたび、「いらいらしていた。ああ自分は朝鮮人なんだ、と心の痛みで知った」。

 そして、「戦争におびえていた」。

 厳しさを増していった米朝の対立だけが原因ではなかった。日本政府は朝鮮学校だけを高校無償化制度から排除し、県や横浜市も補助金を打ち切った。ネット上には「テロ国家」「朝鮮人は帰れ」とヘイトスピーチがあふれ、「同じ国、同じ人間として認められていない」。ならば引き金はたやすく引かれる。

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