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湘南信用金庫・石渡卓氏
【金融最前線】県内信金理事長に聞く(3)一人一人に向き合う

経済 神奈川新聞  2018年04月26日 12:53

いしわた・たかし 1976年神奈川大学卒。同年横須賀信用金庫(現湘南信用金庫)入庫。2004年常務理事を経て08年から理事長。64歳。横須賀市出身。
いしわた・たかし 1976年神奈川大学卒。同年横須賀信用金庫(現湘南信用金庫)入庫。2004年常務理事を経て08年から理事長。64歳。横須賀市出身。

 -営業地域の経済の現状は。

 「横須賀・三浦と横浜・東京、そして湘南の3地区を経営基盤にしている。横須賀・三浦では転出増加による人口減少と高齢化が課題だ。特に横須賀市では製造業、建設業、生活関連サービス業が基盤だが、長期的には人口の大幅減で成長見込みは少なくなるだろう。一方で医療・福祉業は伸び、観光業を付帯した卸売・小売業や宿泊業、飲食サービス業の成長は見込めると思う。横浜・東京ではいずれも貸出金の需要は大きい。湘南は人口が緩やかな減少傾向にあるが、観光地としての一面や、住みたい街としてのイメージが高く、開業率も高い」

 -地域金融機関として力を入れていることは。

 「地域との連携を積極的に図ることで、地域活性化も目指している。地域や企業、個人の顧客が抱える課題に応えるため、渉外係のほかに各店舗に2人ずつ配置したエリアメンバーと本部の中小企業診断士、社会保険労務士を中心に100人体制の『チーム湘南』を結成している。営業地域から顧客情報はもちろん、地域情報も集め、ビジネスマッチングから創業、事業再生、事業承継まで幅広く取り組んでいる」

 -事業承継が課題となっている。

 「ビジネスの将来が見いだせず、後継者に苦労を掛けたくないと先行きを懸念する経営者がいる。また、血縁と関係なくM&A(合併や買収)で将来性を生かそうと試みる例もあり、100人いたら100人の様態がある。役員を送り込んだり、背中を押したり引いたりしながら対応しており、時には事業をたたむ選択肢もある。後継者を育てる意味では、2005年に若手経営者の育成を目的に設立した『しょうなん経営塾』はこれまでに416人が卒業し、異業種交流やビジネスチャンスの場として地域に活用されている」

 -低金利の環境が続いている。

 「例えば他の地域金融機関との間で金利の競争になったとしても、お互いに自らの首を絞めていることに、みんな気付いている。良識ある歯止めがかかってくるし、すべきことをしていればお客さまは評価する。同業者も含め競争原理が働いたとき過度に一喜一憂していると、本来の事業のやり方を失う。そういうときだからこそ、一人一人のお客さまに向き合っていくのが正解だと思う」

 -マイナス金利政策は続きそうだが。

 「低金利の情勢の中で収益を上げる手段として、融資の増加、あるいは資金運用があるだろうが、どの道も狭き門。運用面からすれば金利は上がってほしいが、上昇についてはタイミングは非常に難しいだろうし、当面低金利でいかざるを得ないだろう。一時期、金融機関が手数料を取るというのはナンセンスという時代もあったが、今は手数料に頼らなければ経常的に難しい時代になっている」

 -苦しい時代に打つ手は。

 「これで起死回生という策はない。必要なことは、いま一度の経費削減と職員教育、そしてお客さまとの距離を信金らしく詰めること。もっといい意味でお客さまと密着をしなければならない。すぐに数字は出ないが、苦しいからこそやらねばならない。これ以上金利を安くしてもお客さまにメリットはなく、情報交換できる距離感を確立することが必要だ。低金利も未来永(えい)劫(ごう)続くわけでなく、1年、2年の間にその先に生きるための準備をしなければならない。情報の共有や外部との連携、地域に寄り添いながらフィードバックできる体制づくりも進めていく」

湘南信用金庫
 1924年設立。横須賀・三浦・逗子・鎌倉・藤沢・茅ケ崎市、寒川町、横浜市磯子・保土ケ谷・中・神奈川・鶴見・西・金沢・戸塚・港南・南区、東京都品川・大田区に47店舗。2017年3月末の貸出金残高は6434億円、預金残高は1兆867億円。


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