「女性管理職3割」の壁は依然高い状況にある日本企業だが、独自の取り組みで女性比率を増やしたり、働き続ける環境を整えたりする動きも起きている。
日産自動車(横浜市西区)はこの15年間で、国内の女性管理職の比率が6倍以上に増大した。2004年の1・6%から19年は10・4%に上昇し、県内製造業平均の4・8%(19年)を大きく上回る。
主導的役割を果たしているのが、04年に設立した部署「ダイバーシティ・ディベロップメント・オフィス(DDO)」だ。人事部から独立した専門組織でキャリアアドバイザーらが在籍する。
同部署が力を入れるのが「女性のキャリア開発」。管理職候補者の女性を育てるため、キャリアアドバイザー、女性の上司、上司の上司、人事担当者の4人が議論。女性に必要なスキルや経験を洗い出し、数年にわたる育成計画を作成する。新たなプロジェクトを任せたり、研修に行かせたりと経験を積ませるという。
DDOの白井恵里香室長は「この15年間で会社全体の意識は大きく変わり、女性が活躍するのが当たり前になった」と話す。
多様な働き方を選択できる制度を取り入れる企業もある。
プラント建設大手の千代田化工建設(同)は17年5月から、育児や介護目的の社員を対象にした在宅勤務制度の運用を開始。1日の勤務時間4時間が条件だが、時間帯は早朝深夜を除けば自由で、時間を分けて勤務することも可能だ。
同社には有給休暇を永久に繰り越せる仕組みがあり、最終的に1カ月の所定労働時間152時間に満たない場合でも、たまった有給休暇を不足時間に「充当」することも可能という。
中村薫総務部長は「選択肢があることが働き方を柔軟にしている。『会社がこれだけの制度を用意するということは自分に辞めないでほしいんだ』と思える機会にもなる」と効果を口にする。
人事部によると、19年度までの5年間で育休を取得した社員は男性14人、女性39人の計53人。復職率は5年連続で100%という。
17年10月からは配偶者帯同休職制度を導入。社員が配偶者の国内外の赴任に帯同する場合、以前は退職せざるを得なかったが、導入後は赴任期間の休職が可能となった。
中村部長は「建設業界は人材育成に時間がかかる。国内外の赴任も多い。入社してくれた社員を大事に育てて、長く働いてもらうために社としてサポートすることは大切」とした。