重度の知的障害がある浅川天良(たから)君(12)は横浜市立馬場小学校(同市鶴見区)の個別支援学級に籍はあるが、げた箱は通常学級の6年3組のスペースの一角にある。総合学習や家庭科、図工の授業は、3組で受けることがある。
3組で給食を食べるのは週1回ペース。2月中旬のこの日のメニューは、ツナそぼろご飯、のっぺい汁、白玉ぜんざい、牛乳。天良君は一気に平らげた。
「ご飯、お代わりする人?」
3組担任の井手浩史教諭(33)の問い掛けに、食べ盛りの天良君も高々と右手を上げた。そばで一緒に食べていた支援級担任の大山広昭教諭(36)から白玉ぜんざいをもらって食べ終わったばかりだったが、まだおなかに入るようだ。
「天良、給食いっぱい食べるよね」
「食べるの早いよね」
近くにいた女児や男児は目を見張った。給食の時間が終わって天良君が支援級の教室に戻る際、クラスメートとはハイタッチをして別れた。
「共に」求め涙
別の日には、6年3組で総合学習の一環として和菓子の「練り切り」作りに取り組んだ。手を洗い、ゴム手袋をして備えた天良君は教室内を歩き回り、チョークを手にした上に黒板にも手を触れてしまった。
「天良、もう一回、手を洗いに行こう」
穏やかにそう声を掛けて手洗いを見守ったのは、鈴木優矢君(12)と比嘉瞬君(11)だった。
2人には、苦い記憶があった。昨年秋、市内の6年生が競技場に集まって開かれた長縄跳び大会。クラス目標は「連続100回跳ぶこと」だった。天良君が適切なタイミングで跳ぶのは難しかった。そこで、鈴木君は、自由気ままに歩き回る天良君に跳ぶ時がきたら声を掛けることにした。比嘉君は、天良君の背中を右手で押して縄跳びに近づくタイミングを伝える役に回った。教諭の指示があったわけではなく、子どもたちだけで考えたことだった。
結局、天良君は縄跳びに近づいて跳ぼうとはしたが、足に縄が引っかかってしまった。比嘉君はあまりの悔しさに泣かずにはいられなかった。
「同じクラスの一員として天良にも跳ばせたかった」