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命救う精鋭、日々鍛錬 横浜市消防局レンジャー隊 

社会 神奈川新聞  2016年10月17日 12:18

潜水塔で厳しい訓練に励む隊員たち=横浜市消防訓練センター
潜水塔で厳しい訓練に励む隊員たち=横浜市消防訓練センター

 半世紀以上の歴史を持つ横浜市消防局の特別救助隊。日々訓練に明け暮れる隊にとって、最も過酷な時期を迎えている。3週間にわたる潜水士の訓練を実施中。新たな隊員を選抜する試験も今月行われた。救助のスペシャリストとして心身ともに鍛える日が続く。

 長さ50メートルのプールと深さ6メートルの潜水塔を備える市消防訓練センター(同市戸塚区)。潜水士たちの「潜水科教育」が始まった。この課程を通過しないと、水中に潜った救助を担うことができない。

 「自分に負けるな。現場で救助できない方がもっと苦しむぞ」。教官の吉田雅史さん(42)=同市瀬谷区=の声が響く。フィン(足ひれ)を着けた訓練生たちがプールを周回していた。仲間に遅れまいと、誰もが必死の形相だ。

 夕方には、フィンやマスクが落ちたトラブルを想定し、ボンベなしで潜水するメニューが待ち受ける。午前8時半から続く一日の最後。足がつり、慌てる訓練生が出ると、「パニックになるな」と忠告が飛ぶ。

 市消防局には、大規模災害時の統括的役割を担う特別高度救助部隊(スーパーレンジャー、SR)と市内18区にそれぞれ特別救助隊があり、潜水士の国家資格を持つ隊員の中から推薦を受けた20~30代の8人が訓練を受ける。そうした“猛者”たちにとってもハードルは高く、課程中に脱落者が出ることもある。

 訓練生の一人、金子裕宣さん(32)=同市鶴見区=はSRに所属。2年前に自主的に潜水士の資格を取った。その金子さんでも「息も吸えない特殊環境のなか、足が動かなくなることもあり、これまでの訓練で一番つらい」と言う。

 訓練生は寮生活を送りながら3週間を過ごす。17日からは八景島マリーナ(同市金沢区)内などの海域に場所を移し、実践訓練が始まる。訓練生よりも教える側の方が多い。海中は視界がほとんどなく、万一に備えるためだ。吉田さんは「自分の安全を十分に確保しながら、人を助けたいと思う初心を忘れないで訓練に臨んでほしい」と話す。

 各区の特別救助隊で働く隊員は合わせて325人。今月上旬には4日間にわたって、選抜試験が実施された。約40人の定員に応募は98人。腕立て伏せや腹筋、持久力の体力テストのほか、ロープを使った渡過訓練も行われた。SR部隊長経験者で消防司令の佐久間栄吉さん(49)=同市青葉区=は「訓練技術はもとより、最後まで人命救助をやり通す精神力が必要」と話す。

 11月中旬からは、選抜試験に合格した消防隊員が特別救助隊養成科の訓練を受ける。県内の自治体は県消防学校(厚木市)の訓練課程を活用するが、横浜市では1993年から試行錯誤を重ね独自のカリキュラムを作成してきた。来年1月にはSRの訓練も実施される。市民の救助に奔走する精鋭は、日々鍛錬を積み重ねている。


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