他にはない神奈川のニュースを!神奈川新聞 カナロコ

  1. ホーム
  2. ニュース
  3. カルチャー
  4. 文化・科学
  5. 相模原の鍛金作家が個展 4月5日まで平塚市美術館

「糸賀英恵展 うつろいのかたち」
相模原の鍛金作家が個展 4月5日まで平塚市美術館

文化・科学 | 神奈川新聞 | 2020年2月26日(水) 19:38

時間や天候で変化する自然光で見る面白さが生まれている「糸賀英恵展」=平塚市美術館
時間や天候で変化する自然光で見る面白さが生まれている「糸賀英恵展」=平塚市美術館

 高さ11メートルのホールに点在する17点の銅の工芸品。ひらひらとした曲線を持つ柔らかな形は人体や植物をモチーフにしており、うつろう生命の美を表現している。相模原市中央区在住の鍛金(たんきん)作家、糸賀英恵(41)の個展「糸賀英恵展 うつろいのかたち」が、平塚市美術館(同市西八幡)で開催中だ。「命の変化を形にできれば」と創作にいそしむ糸賀に鍛金の魅力を聞いた。

 「自分では彫刻と工芸の中間にいると思っている」と糸賀。「素材に育ててもらっている点では工芸。出来上がってくる形は彫刻。現代はいろいろなものの境界があいまいなので、あまり気にならない」という。

 素材となる銅は「素材自体でいろんな色が出て、生き物っぽく表情豊かに作ることができる」。600度に熱した銅の板を水に入れて冷まし、手で曲げて形を作り、表面を金づちでたたく。この「焼きなまし」作業を繰り返し、幾つものパーツを溶接して一つの作品が出来上がる。

 表現したいのは「移ろう命」。柔らかな花の形や感情移入しやすいという女性の姿をモチーフに、変化していく姿を追う。

 壁に掛けた作品「ちりぬるを」は天から舞い降りてくる女性の姿をイメージ。散るさまも美しい花の姿を重ね、ひらひらと散っていくようにも見える。

 「不完全花」ではバラを模した。「花の形の持つベクトルはさまざま。ぐるぐるしていたり、しゅっと飛び出していたり」と、複雑な構造を持ちながらも、しなやかな花弁を表現した。

 前衛生け花作家の故中川幸夫(ゆきお)の作品に触発され、多摩美大大学院のとき、花をテーマにした作品に取り組むようになった。


「壁に掛けて軽やかさを出した」という作品「ちりぬるを」を背にする糸賀英恵=平塚市美術館
「壁に掛けて軽やかさを出した」という作品「ちりぬるを」を背にする糸賀英恵=平塚市美術館

 「中川さんの花には命に迫っていくような造形があり、そのパワーに圧倒された。花のすごさを表したい思いが生まれた。本当に自分が感じたことじゃないと作れない。自分が思ったことを板に映し込んでいく仕事をしよう、と思った」

 鍋やかぶとのように、鍛金というと閉じた形の工芸品が多く、物足りなさを感じていた。板に切り込みを入れて開くことで、表裏を感じさせないくねくねした形に行き着き、移り変わっていく複雑な表情を表現できるようになった。

 結婚、妊娠、出産と自身の人生の変化も女性の姿になぞらえる。育児も創作も夫との二人三脚。「限られた時間の中で、気持ちの悪いものは作れない」と、疲れて途中で投げ出したくなっても、より良い形状を求めて焼きなましを続ける。

 「次こそは、次こそはという思い。技術も上がってきて、自分がいいと思う形にできるようになってきた。この表現方法を通じてもっと美しい形にしたい」

 4月5日まで。2月24日を除く月曜と同25日休館。観覧無料。問い合わせは同館☎0463(35)2111。

 
 

平塚市美術館に関するその他のニュース

文化・科学に関するその他のニュース

PR
PR
PR

[[ item.field_textarea_subtitle ]][[item.title]]

カルチャーに関するその他のニュース

アクセスランキング