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川崎転落死事件の衝撃(5)対策 「介護はチーム力で」

社会 神奈川新聞  2018年03月27日 12:58

 川崎市内の特別養護老人ホームで組織する「市老人福祉施設協議会」の磯野利男会長は、同じ市内の介護施設で起こった連続転落死事件を複雑な思いで見つめてきたという。

 「職員が3回も転落事件を起こすまでに、周囲に何かしらの発見や気付きはなかったのだろうか。大抵は分かるものだが、それが職場の中で言えない環境だったならば、施設側の責任にもなるのだが…」

 殺人罪に問われた元施設職員に死刑を言い渡した22日の横浜地裁判決は、事件の背景に入所者への不満があったと認定したが、磯野会長はそもそも介護現場で職員がストレスを感じずに働くことは不可能とする。認知症の入所者に自分の思いを伝えることは根本的に難しい一方で、年配者の尊厳を重んじた接遇マナーも同時に要求されるためだ。

 磯野会長が施設長を務める特養施設では、処遇の難しい人を念頭にした介助の検討会や研修を実施。入所者の入浴や食事などでうまくいった手法を職場内で共有することで、悩みを抱えた職員が孤立して過度なストレスをため込まないよう工夫している。

 例えば、食事中に歌うことをやめず、なかなか食べてくれない入所者がいた場合、業務の停滞を懸念する職員は何とか早く食べさせることばかりに意識が向きがちになる。解決方法として研修では、一曲だけ一緒に歌って終わったら食べましょうと提案し、その後の食事が円滑に進んだ事例が報告されたという。

 「お年寄りは思い通りにならない。ストレスは感じることを大前提に、それをいかにコントロールするのかが重要だ」と磯野会長。そうした風土を職場に根付かせることが運営側の役割とした上で、「介護はチーム力でやるもの。施設が適切に取り組めば、大半の虐待は予防できると思う」と述べた。

 磯野会長の指摘する取り組みは「ストレスマネジメント」などと呼ばれ、虐待の予防策として介護業界でも近年注目されている。日本最大の介護従事者の組合「日本クラフトユニオン」は昨夏、労使関係にある法人に呼び掛けて集団協定を結び、共同してストレスマネジメントの実践に努める方針を打ち出した。

 「職場の中で生まれるストレスが虐待の大きな要因。労働環境と虐待防止は分けて考えることができず、だから労使で考える必要がある」と同ユニオンの染川朗事務局長。今年からは研修会などの具体的な試みを始める予定で、職員の参加に職場の理解が得やすいのも労使一丸の利点だ。

 「全体として同じ方向を見てやっていきたい。そういうことをしないと虐待は撲滅できない」。染川事務局長は力を込めた。

 =おわり


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