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川崎転落死事件の衝撃(4)虐待 業界の構造に要因も

社会 神奈川新聞  2018年03月26日 12:04

 介護施設での重大な虐待事案は、川崎市の連続転落死以外にも全国で多発している。共通の背景として指摘されるのが職員のストレスや不満だ。それほどまでに介護職員が負の感情を抱え込んでしまう理由はどこにあるのか。関係者の声に耳を傾けると、決して個人の資質では片付けられない業界の構造的な要因も浮かび上がってくる。

 「十分な人材の確保、質の高い介護職員の育成、勤務環境の改善がないと虐待はなくならない」(30代男性)、「虐待はあり得ないと思うことが一番危険。虐待する可能性は誰もがある」(40代男性)
 日本最大の介護従事者の労働組合「日本介護クラフトユニオン」が2016年6月に実施した虐待に関するアンケートには、組合員の切実な思いや危機感が色濃く反映されていた。

 アンケートでは虐待の原因についても複数回答で尋ねており、「業務の負担が多い」54・3%、「仕事上のストレス」48・9%、「人材不足」42・8%の3項目が突出。同ユニオンの染川朗事務局長は「人材不足がゆえに業務の負担が多く、ストレスも出やすいという構図が数字からも分かる」と解説する。

 近年の介護業界の人員不足は深刻だ。同ユニオンによると、08年のリーマン・ショックのころは安定した職業を求めて相当数の人が業界に流れてきたが、徐々になり手が減少。離職率も他産業より2%ほど高く、離職者が業界内で回らずに他産業へ流出する傾向も顕著になったという。

 昨冬の賞与の労使交渉では、予定していた採用人数を達成できずに人件費が想定外に浮いたため、法人側が大幅な増益を報告する事例も散見された。

 こうした売り手市場は採用側の心理にも影響する。面接をしても多少のことは目をつぶらざるを得ず、入ってから育てる心づもりでないと人員の確保が難しい状況も生まれている。

 「まあ、賃金でしょうね」と、染川事務局長は介護業界が敬遠される理由を説明する。他産業との平均格差は月給で8万5千円ほど。「給料が安くても良いという志のある人もたくさんいるが、その人だけで業界を支えるのは無理」と指摘し、「介護の質の低下は賃金と必ず結びつくと思っている」とする。

 特に現場レベルで現れる一番の問題点は、人手が足りないため職員が入所者を見ることで手いっぱいになり、仲間同士に目を向ける雰囲気や態勢がおろそかになることだという。

 「例えば介護従事者として不適切な言動があって、そのことに周囲も何となく気付いていたとしても、気遣う余裕がないからケアできないことがある」と染川事務局長。あくまで推測と前置きした上でこう分析する。「そういう側面が、川崎の事件でも根底になかっただろうか」


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