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3.11 東日本大震災7年
【減災新聞】横浜・北綱島小の防災教育 家庭、地域の備え結ぶ 共助の担い手も視野

減災 神奈川新聞  2018年03月06日 14:13

防災バッグに入れる水の量について意見を交えた5年生の公開授業=2017年12月1日
防災バッグに入れる水の量について意見を交えた5年生の公開授業=2017年12月1日

 災害から命を守るために欠かせない知識や行動を学ぶ防災教育。津波避難が大きな教訓となった東日本大震災を経て、その意義が強調されているものの、学校現場にはあまり定着していない。授業時間の確保が難しく、教員にノウハウがないからだ。そうした課題を克服しようと試行錯誤を重ねる横浜市立北綱島小学校(同市港北区、児童数656人)の実践を見た。

家族も守ろう


 「僕は500ミリリットル。自分だけなら我慢できる」「私は3リットルは入れておきたい。顔を洗うためにも使うと思うから」

 2017年12月1日の公開授業研究会。5年1組は総合学習の時間で、自分の防災バッグに入れておく水の量を話し合った。

 実際に被災した状況をイメージし、「給水まで3日かかる」「本当に地震が起きたら、ドキドキしてのどが渇くかも」といった意見が出る一方、「水ばかりでは重くなる。私は代わりにゼリーを持っていく」という工夫も。

 実際にリュックに詰め込んで重さを量ると、意見が変化する。「水はいろんな用途で使えるので2・5リットルにした。支援が遅れるかもしれないし」「2・5リットルでは逃げるときに大変。私は2リットルにする」

 この日のテーマは「守ろう!大切な家族」。児童はそれまでの学習の過程で、災害がいつ、どこで起きるか分からないと学び、日頃の備えの大切さを共有。その上で防災バッグに何を入れるべきかを考え、授業に臨んでいた。

 活発な意見交換の締めくくりに、ある男児はこう発言した。「自分の身を守るためのバッグを作れて良かったが、まだ知らないことはいっぱいある。いろいろな災害があるかもしれないけれど、自分だけじゃなく、みんなを守りたい」

 公開授業は2、3年生でも行われ、個別支援学級は災害時に取るべき行動を体を使って学ぶ「防災サーキット」に取り組んだ。

「安全」入り口


 北綱島小の防災教育は東日本大震災後の12年度に始まった。学区内に住宅密集地があり、延焼火災時の避難対応などが課題となる一方、核家族が多く、いざという時に大人を頼れない家庭が少なくない。

 そうした地域性も踏まえて独自に考案したカリキュラム「きたつな安全防災プラン」は「『いつでも、どこでも、何があっても』自分の命や他者の命を大切にし、学校で家庭で地域で生き抜く力を養う」を目的に掲げる。これに基づき、学年に応じて体系的な授業を展開している。


関東学院大生から避難所用の間仕切りについて学ぶ6年生ら=2017年12月14日
関東学院大生から避難所用の間仕切りについて学ぶ6年生ら=2017年12月14日

 3、4年は「正しい知識と行動で自分を守る」が目標。5、6年はさらに発展させて「他の人々の安全にも気配りができる」ことを目指す。

 「防災」でなく、「安全防災」をうたう理由について、昆しのぶ校長は「防災だけでは、低学年や個別級が取り組むのが難しいと分かったため」と説明する。より日常的な課題である防犯や安全な登下校といった視点を加え、「安全を入り口にして防災につなげる」ことを意図している。

 防災学習は主に生活科や総合学習の時間に行うが、理科や社会、道徳など他教科も活用。外部の力も借りて、より専門的に学ぶこともある。

 6年生の関心に応える形で昨年12月14日には、関東学院大の教員や学生が地震による液状化現象の実験を行い、避難所で使われる間仕切りやトイレについても実演を行った。

参観時に訓練


 家庭や地域との連携を重視する点も大きな特徴だ。

 毎年6月の学校総合防災訓練は授業参観も組み合わせ、保護者参加で実施している。安全防災の授業後、大地震が起きたと想定。大人も頭を隠してしゃがみ込むなどし、校庭に一緒に避難した。バケツリレーなどを通じて保護者も備えの大切さを確認し、共助の意識を高められるように工夫している。

 また、本来は地域住民が中心となり、避難所の開設や初期消火などの手順を確認する秋の地域防災拠点訓練を授業の一環とし、児童や保護者が参加。5年生はこの場を使って必要な水の量に関するアンケートを行い、防災バッグの授業に役立てた。

 昆校長は「点になりがちな訓練を学習と結び付け、線でつながるようにしている。そこに地域の協力が加わり、面に広がっている」と協調。家庭や住民の意識が高まっているとの実感もある。今後については「中学校と連携し、本校を卒業後も共助の中心となれるような力を育んでいきたい」と思い描く。

 そして、こう強調する。「安全防災教育は学校だけではできないが、総合学習などを活用しながら地域と連携すれば、どの学校でも取り組める。もっと広がっていってほしい」


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