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最新マンション事情(3) 先進 大型物件の「常識」

経済 神奈川新聞  2020年02月12日 17:30

マンション内の体育館でボルダリングに挑戦できる=プレミスト湘南辻堂
マンション内の体育館でボルダリングに挑戦できる=プレミスト湘南辻堂

 リズム良く弾むバスケットボールの音が響き渡る。体育館を建物内に構えた「プレミスト湘南辻堂アクアフェイス」(404戸、JR辻堂駅徒歩9分)。バドミントンコートや卓球台も備え、壁面ではボルダリングが楽しめる。

 「雨の日でも子どもたちが走り回れるので大満足です」。入居者の男性会社員(41)は長男(9)と長女(6)がはしゃぐ姿に目を細める。

 ファミリー世帯は今も昔も、デベロッパーにとって最大のターゲットだ。いかにこの層を射抜くか、各社は知恵を絞ってきた。例えば共働き夫婦が増えた近年は、家事負担を軽減する間取りの追求に工夫を凝らす。

 ところが近年、シニア世代もマンションへ熱いまなざしを送る。リタイア後に郊外の一戸建てを手放し、交通や買い物などの利便性が高い物件へ移り住む動きが顕著になってきた。

 こうした潮流を踏まえ、プレミストの開発を主導した大和ハウス工業(大阪市)は「健康」をテーマに掲げた。建設中の2棟目にはフィットネスジムを入れ、外周部にはウオーキングコースを造る。

 さらに、歩数や睡眠時間を記録できるリストバンド型の特殊な端末を各世帯に配布。将来的にはアプリと連動させ、個々に最適な運動メニューの提案を見据える。

 販売ギャラリーの島田隆弘所長は「気軽に体を動かせる生活環境を提供したい」と話す。

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 「現時点で市内最高層の住宅。坪単価は周辺にはない『最高価格』です」

 小田急不動産(東京都)開発企画部の松井みどりグループリーダーが明かす。強気の理由は海老名駅から徒歩3分という立地にある。最上階の「億ション」5室は即日完売した。

 施設の充実にも力点を置いたという。開放的な吹き抜けのエントランスホール、千冊超の書籍が閲覧できるライブラリー、遊具がそろうコミュニティールームを備えた。

 全304戸。「この規模なら欠かせない設備です」。販売担当者はさらりと話す。

 「販売価格が高止まりする中、顧客を引きつけるには『立地』だけでなく『機能』の優位性が欠かせない」

 マンション市況に詳しい東京カンテイ(同)の井出武上席主任研究員は、最近の傾向をそう読み解く。

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 「お帰りなさいませ」

 コンシェルジュが入居者を迎え入れる光景も、今や大型物件では珍しくない。人件費は各戸から徴収する管理費を押し上げるが、スケールメリットで負担感は和らぐ。

 みなとみらい線馬車道駅徒歩1分に位置し、今春の入居開始を前に完売した「ザ・タワー横浜北仲」。総戸数1100戸を超える巨大マンションには、入居者宛ての宅配物をさばく専任スタッフが複数常駐する。

 大規模物件の場合、宅配業者は一度に大量の荷物を持ち込み、入り口のインターホンで在宅を確認してから部屋を移動していく。最後の住戸に到着するまでにはタイムロスが生じがちだ。

 これを防ぐため、スタッフは宅配物を一手に引き受け、専用システムで各戸の住民とインターホン越しに通話しながら時間差なく荷物を手渡していく。

 「ネット通販の普及で浮かび上がった課題を解決したい」。三井不動産レジデンシャル(東京都)横浜支店の大熊麻祐子主任は力を込める。

 都内で来年の完成を待つ「ブランズシティ調布」(全305戸、京王線調布駅徒歩7分)には、専属の保育士が待機する。東急不動産(同)によると、共有スペースで午後の約6時間にわたり下校後の小学生や園児を預かり、予約制で夕飯も用意する。

 広報室の林英樹マネージャーは「『学童保育』の機能を自宅に備え、ご両親の残業にも対応したい」と話す。

 スタッフと設備の両面で絶え間ない進化を遂げる大型マンション。その「常識」は変わり続けている。


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