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時代の正体〈580〉分校化に道理見えず 北綱島支援校再編問題(下)

時代の正体 神奈川新聞  2018年02月18日 22:55

中学部2年の加藤龍治さん(14)と母の千春さん(49)。千春さんはPTA会長として学校存続を求める活動を続けている=2月14日、北綱島特別支援学校
中学部2年の加藤龍治さん(14)と母の千春さん(49)。千春さんはPTA会長として学校存続を求める活動を続けている=2月14日、北綱島特別支援学校

時代の正体取材班=成田 洋樹
 「車が入ります」
 14日午前9時半すぎ、横浜市港北区の市立北綱島特別支援学校正門そば。ジャージー姿の村上英一校長の声が響いた。教職員が、隣接する市立北綱島小学校の駐車スペースに保護者らの車を誘導する。登校する車いすの子どもたちの周りには笑顔の輪が広がった。

校長も疑問視


 村上校長にとっても、着任した2015年度の半ばに明らかになった閉校計画は衝撃的だった。在校生が主に住む横浜市北東部(港北、鶴見、都筑、神奈川区)が、肢体不自由特別支援学校の空白区域となるからだ。「人口が増えている地域の学校をなぜなくしてしまうのか」。疑問が拭い去れなかった。

 市教育委員会は閉校後の19年度には別の支援学校への転校を保護者に求める一方、スクールバスの乗車時間を1時間以内に抑えるとする方針を示していた。だが校長は「保護者や子どもの実情を踏まえた上での計画だったのか」と首をかしげる。

 北綱島のスクールバス5台の停車場所はそれぞれの自宅から徒歩約10分以内にある。各送迎コースで最も遠い子の乗車時間は55分から75分ほど。一方、転校先とされた学校への乗車時間を調べたら、1時間半以上かかるケースもあった。

 「バス通学の時間が長くなれば、子どもの負担が増すのは明らか。安全のために車いすや座席上で体を固定された状態で乗るので、体が硬直する。登校後に教員が子どもをマットに寝かせて体を伸ばしたりしているが、転校によって長時間通学が続くと体のさまざまな機能の低下につながってしまう」

 さらに、たんの吸引などの医療的ケアが乗車中に必要な子は原則としてバス通学ができないため、保護者や祖父母、ボランティアや有償ヘルパーらが車で送迎するしかない。北綱島では車で送迎する家庭は約3割。子どもは福祉用車両の後部スペースに車いすごと乗るか、助手席などに座る。子どもの状態を気に掛けながら運転し、たんが詰まって苦しそうだったら車を止めて吸引する。長時間通学となれば、それだけ交通事故のリスクが高まる。

 保護者の一人が苦しい胸の内を明かす。

 「20分ほどかかるいまでも綱渡り。閉校によって転校となった場合、最も近い上菅田特別支援学校(保土ケ谷区)でも1時間近くかかるため通えない。そうなれば、母子ともに家に閉じ込められてしまうことになる。なぜ市教委はそのような閉校計画をまとめることができたのか」

 保護者の反発を受け発表から3カ月後に撤回された閉校計画は、子どもたちの学校に通う権利を奪いかねないものではなかったか。村上校長が保護者の思いを代弁する。

 「医療的ケアが欠かせない重度重複障害の子どもたちは、自宅から比較的近い学校だからこそ通うことができる。学校が今よりさらに遠くなれば通える回数も減り、同世代の子や先生と触れ合える機会も少なくなる。閉校計画にはその恐れがあった」


小学部5年の佐藤海斗君(11)と母の和恵さん(41)。体調管理に努めながら週2、3回の通学を楽しみにしている。利き手の左手でのハイタッチが得意だ=2月13日、北綱島特別支援学校
小学部5年の佐藤海斗君(11)と母の和恵さん(41)。体調管理に努めながら週2、3回の通学を楽しみにしている。利き手の左手でのハイタッチが得意だ=2月13日、北綱島特別支援学校

責任はどこへ


 校長の不安は通学の問題だけではない。

 北綱島で医療的ケアを必要とする子どもの割合は65・2%(69人のうち45人)に上り、市立肢体不自由特別支援学校5校の中で最も高い。分教室を含めると70%を超える。

 この3年間で3人の在校生が亡くなった。体調急変で保護者を呼び出す緊急連絡が、半年間で延べ50件を超えたことがある。

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