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人出不足や長い拘束時間、環境改善厳しく
旅館業問われる働き方 県西地域「過労死ライン」超え33事業所

社会 神奈川新聞  2018年02月13日 10:09

11連休を終えた「箱根ガラスの森美術館」で、雪をまとった庭園を楽しむ観光客ら =2日
11連休を終えた「箱根ガラスの森美術館」で、雪をまとった庭園を楽しむ観光客ら =2日

 小田原労働基準監督署が管轄する県西地域2市8町の旅館業33事業所で、過労死ラインとされる「月80時間以上」の時間外労働・休日労働があったことが、同労基署の調査で分かった。法令違反とみられるケースも100を超える事業所で判明。働き方が問われている昨今の事情も踏まえて調査した同労基署は、関係機関に協力を要請するなどして労働環境の改善を促している。

 調査は、管内で旅館やホテルなど旅館業を営んでいる658事業所が対象。昨年7月に労働時間などに関する計20項目への回答を求める書面を送付し、今年1月までに261事業所から有効回答があった。大半が箱根、湯河原の両町を所在としているという。

 調査結果によると、過労死ラインとされる「月80時間以上」を超える時間外労働・休日労働があったのは33事業所(12・6%)。うち19事業所(7・3%)で「月100時間以上」の時間外労働・休日労働も確認された。

 「従業員50人以上」規模の事業所に限ってみると、過労死ラインを超える時間外労働・休日労働があったのは13事業所。有効回答があった同規模の事業所全体の約4割を占めた。

 また、この33事業所を含む計111事業所で最低賃金法、労働基準法、労働安全衛生法違反とみられる回答もあった。労使協定(三六協定)違反や、同協定の未締結、定期的な健康診断の未実施などで、半数近くが「従業員10人以上49人以下」の規模だった。

 同労基署は、箱根山・大涌谷で火山活動が沈静化して以降、新たに従業員を雇うなど労務管理を変更した可能性を考慮。自主点検を通じて業者に改善を促す狙いもあり、少なくとも過去10年は行っていなかった調査を実施した。

 哘崎雅夫署長は「法令違反が他業種と比べて多い印象。規模が大きめな旅館でも人手不足が起き、労働時間が長くなっている」と分析。旅館業は拘束時間が長く、労働状況が特殊とも指摘する。

 管内の旅館やホテルからは辞めた従業員分の人員が入ってこないといった声が上がっているといい、慢性的な人手不足が背景にあるとみている。

 同労基署は管内の各旅館組合に対し、組合員に注意喚起することを要請したほか、悪質な違反があった業者に対しては呼び出して指導。4月以降は個別に訪問して現状確認をするとしている。

休館増やし開館も遅く
文化施設、新たな取り組み


 小田原労働基準監督署の調査で、県西部の旅館業における労働実態の一端が明らかになった。有効回答をした事業所の1割強で過労死ラインを超える時間外労働があった一方、現場からは人手不足を訴える声が相次ぐ。宿泊施設が集中している箱根町の文化施設では働き方を変えようとの動きも出始めている。

 「有給取得を、と会社には言われているが、なかなか取れない」。全国指折りの温泉街、箱根町にあるホテルの担当者は厳しい現状を明かす。人手不足は否めず、調理や接客現場で残業があるが、改善策はなかなか見つからないという。

 同町に構える別のホテルの担当者も「若い社員がすぐに辞めていってしまう」と吐露する。「管理職は残業代が出ないから、朝から夜遅くまで毎日働いている人もいる。現場の社員に『俺の背中を見ろ』みたいな感じで接するため、世代間で考え方のギャップが生じている」とも語る。

 同町観光課にも人手不足を訴える声は以前から届いており、ここ数カ月は特に多いという。紅葉客でにぎわった昨年秋は「『もっと客を取りたかったが、労働力が足りずセーブした』と話す業者もいた」とし、「町内の旅館業は『働き方改革』に着手できる段階にない」と話す。

 宿泊施設で苦しいやりくりが続く中、町内の文化施設では新たな取り組みも始まっている。

 1996年の開館以来、年中無休だった箱根ガラスの森美術館(同町仙石原)は、従業員の休みを確保するため、先月9日から初めて11日連続で休館とした。昨年4月からは開館も1時間遅らせている。

 営業方針の転換について岩田正崔館長は「従業員のモチベーションを上げるため」と話す。「従来はサービス残業が付き物になっていた」と明かすが、開館を遅らせたことで余裕を持って準備ができ、サービス向上につながったという。

 「数千万円規模で売り上げには影響する」と語るものの、2017年度の収益は16年度を2~3%上回る見通し。成人の日の翌日以降の時期が年間で最も来館者が少ない時期で、19年以降も11連休を続ける方針という。

 労働環境の改善について、岩田館長は「トップの判断が大事。意識改革をすれば可能だと思う」と指摘する。世代間ギャップに対する悩みを打ち明けていた同町のホテルでも、意識改革を目的とした管理職向けのセミナーや講習を実施している最中だ。

 「若い労働力をどうやって引きつけるか。就職のターゲットになるよう努力していかなければならない。ただでさえ、箱根の奥の方だから」。岩田館長は人材確保の工夫の必要性もまた実感している。 


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