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地域力担う人々
相模原、閉校の地に集う(下) 「不便という豊かさ」

社会 神奈川新聞  2018年02月12日 10:42

自分たちも楽しみながら来場者をもてなす達人たち。首にタオルを巻くのが「牧郷豆の会」会長の倉田実さん(右から2人目)=1月13日のどんど焼きで
自分たちも楽しみながら来場者をもてなす達人たち。首にタオルを巻くのが「牧郷豆の会」会長の倉田実さん(右から2人目)=1月13日のどんど焼きで

 2003年3月に閉校となった相模原市緑区牧野の牧郷(まきさと)小学校を拠点に、新たに地域の魅力を世界に発信しようと住民たちで発足した「あすの牧郷をつくる会」(倉田典昭代表)には強い味方がいる。

 おやじたちによる、おやじたちのための、おやじたちの会として活動する「牧郷豆の会」(倉田実会長)の存在だ。耕作放棄地を活用して収穫した大豆からみそを造り、野菜を栽培し収穫祭で販売。小麦も栽培、収穫し、イベント出店で使う焼きそばやうどんに使うなど、本格的な味を追求している。二つの団体は車の両輪のように、自分たちが楽しみながら、地域の活性化に貢献している。

 豆の会会長の倉田さん(68)は「草刈り、漬物作り…何をやっても達人だ、と都会から来た若い人に言われたんだ。励みになったね。俺らも生きている価値があるんだな、と教えられたんだ」と振り返る。


 達人たちに魅力を感じているのは移住して1年になる星野諭さん(39)。NPO法人「コドモ・ワカモノまちing」の代表理事として、人を育てるプロでもある。星野さんは以前住んでいた都心と比較して言う。「都会では公園で木に登ったら怒られ、穴を掘ったら怒られる」。牧郷は自然だけでなく、「人がタテヨコにつながり、地域外の人たちが入りながら、アメーバのような、形にとらわれない、つながりがある」と目を輝かせる。

 NPO法人の活動で、国内各地を飛び回る星野さんは、現代社会の課題として子どもたちを取り巻く環境が激変し、つながりが失われつつあると感じている。「子どもが道で遊び、秘密基地を作り、まち全体が子どもの居場所になる。近所のおじちゃん・おばちゃんがそれを見守る。そんな昔の光景が、牧郷にはある」という。星野さんはいま、赤ちゃんからお年寄りまでが集う「遊びと暮らしの学校」をつくりたいと準備を進めている。

 牧郷を気に入っているのは都心在住者だけではない。1931(昭和6)年に牧郷小に入学した山下勉さん(93)は「昔から(活動の)仲間に入れてもらい、大事にされている。倉田さんたちのように、もり立て役がいることが大事。移住者を意識して大事にし、持ち味を生かす。とてもいい感じの田舎だと思う」と冷静に分析した。

 こうした心は、移住してきた人たちの心を確実にとらえている。星野さんの妻妙子さんも言う。「一つ一つ手間をかけ、そのプロセスで人とつながり、文化が継承されている。みんなが家族であり、近所で子どもを見守る環境が残っている。ここには、不便という豊かさがあります」


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