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茅ケ崎市美術館、2月11日まで
「見る」を意識した作品を表現 「写真はもとより」展

カルチャー 神奈川新聞  2020年01月30日 18:19

写真の周囲にがらんとした風景を描き足した「Another Day」シリーズの前に立つ城田圭介=茅ケ崎市美術館
写真の周囲にがらんとした風景を描き足した「Another Day」シリーズの前に立つ城田圭介=茅ケ崎市美術館

 写真の周囲に風景を描き足したり、写っている人物を絵の具で消したり、と写真と絵画を使った独自の手法で「見る」ことを意識した作品に取り組んでいる茅ケ崎市在住の現代美術家、城田圭介(44)。国内の美術館では初となる個展「写真はもとより」が、茅ケ崎市美術館(同市東海岸北)で開催中だ。旧作から新作まで約250点が並び、日常生活で無意識に見過ごしている物事に気付かされる。

 「日常を撮ったスナップ写真で何か表現できないか」と思ったのが、作品作りのきっかけだという城田。「写真は過剰な物。身の回りにあふれていて、風景のように通り過ぎてしまう。だが、そうした記憶にも記録にも残らないものが、実は人生の中では多い。取るに足らない写真で、生きることを確認したい」

 初期の代表作「A Sense of Distance」は、オートフォーカスでさっと撮った街角や道路の写真の周囲に、実際に広がっているかのような風景を油彩で描き足したシリーズ。情報をそぎ落とすため、通行人や場所が特定できるものといった余計なものは描かなかった。

 「過剰さを抑えたり、隠したりした方が、人はもっとよく見ようとするのではないか。過剰だとかえってスルーしてしまう」


「Tourist」シリーズに見入る来場者
「Tourist」シリーズに見入る来場者

 風景ではなく、今度は人物に焦点を当てた「Tourist」シリーズは、観光地を写した写真から人物だけを抽出してキャンバスに描いた油彩画。平成最後の終戦記念日に皇居の二重橋に集まる人々を描いた同シリーズの作品では、記念日の意味や象徴的な場所の意味が消え、ありふれた観光客の姿だけが見える。

 反対に写真の中の人物を消すように、写真上の人物の輪郭の中に背景を直接描き込んだのが「Landscape」シリーズ。ギリシャのパルテノン神殿にいたはずの観光客が消え、絵の具で消された痕跡だけが残る。

 二つのシリーズは反転しているが、どちらも描かれていないものの存在が、見る者の意識にかえって強くのぼってくる。

 「歴史ある場所とそこに行ったことを証しとして残したいという人間の振る舞いは、写真と観光が登場した近代から現代までずっと変わらない。歴史に残るものと残らないもの。場所に対する人間の欲望はずっとあるだろうし、人類がいなくなっても遺跡は残り続けるかもしれない」と、対比からあぶり出されるものを表現した。

 川崎市で生まれ、小学校入学以降は横浜市で過ごした。そんな幼少時の自身のスナップ写真から人物を消した「Background」シリーズは、親の目線で捉えた子どもが消え、公園や社宅の部屋といった背景が迫ってくる。個人の限られた思い出が、「いろんな人の記憶にも接続される」ものへと変わる。

 「身近にあるもの、地続きのものとして作品を見てほしい。見終わってから写真を見るということに、何か変化があればいいなと思う」

 2月11日まで。月曜休館。一般500円、大学生300円。問い合わせは同館☎0467(88)1177。


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