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【トラック物流危機 神奈川の現場から(中)】経営者が迫られる覚悟

社会 神奈川新聞  2018年02月06日 10:34

小麦粉の輸送は熟練者のチームで行う=富国運輸鳥浜営業所
小麦粉の輸送は熟練者のチームで行う=富国運輸鳥浜営業所

 2015年には14万人のドライバーが不足する-。国土交通省が07年に発表した予測は、運輸業界のみならず、社会に大きな衝撃を与えた。

 戦後、トラックドライバー不足が問題になったのは今回が初めてではない。1980年末から90年にかけてのバブル経済期、そして2000年代半ばにも、貨物の需要に輸送が追い付かない状況にあった。

 その後、08年のリーマン・ショックに端を発した不況でドライバー不足は一時的に解消されたかに見えた。しかし、景気が上向き始めると、運輸業界は再び労働力不足に見舞われることになった。
 

参入が緩和


 図らずも問題を深刻化させたのは、国の規制緩和策だ。政府がトラック運送業の新規参入規制を緩和したのは1990年。「物流2法」(貨物自動車運送事業と貨物運送取扱事業法)が施行され、約4万社だったトラック運送業者は一気に6万2千~3千社にまで増加した。

 その多くは零細事業者だ。県内のトラック運送業者も従業員数が100人未満が約9割を占める。やがて仕事を獲得するための値下げ競争が始まり、多くのトラック運送業者が人件費の削減に傾いていった。

 トラックドライバーの賃金が低く抑えられ、長時間労働を強いられてきたことの原因として、産業構造の問題を指摘するのが神奈川大学(物流論・交通論)の齊藤実教授だ。「大手ではない、一般のトラック運送業者は、荷主に対する交渉力が弱い状況が続いてきた。特に神奈川は有料道路が多いが、高速料金も事業者が負担を強いられるなど、非合理な慣習があったとも聞いている。この状況を改善しなければならない」
 

高まる関心


 問題の解決へ、高い技術を持つドライバーを育成すると同時に、労働環境を向上させるため、荷主と交渉を行っている経営者の一人が富国運輸(横浜市中区)の飯沼健史社長だ。創業68年、約130人の社員を抱える中堅企業。特殊車両を数多く保有し、特に小麦粉の輸送技術では全国的にも高いレベルを誇る。

 ドライバー不足を感じ始めたのは、やはり2~3年前。神経を使う作業を嫌うドライバーは多く、面接に来ても採用に至らない場合も多いが、品質を守るために妥協はしない。「うちはただの運び屋じゃない、サービス業なんだと社員には伝えている」。荷主から、規定時間を超える作業を求められても「違法になるから」と断るよう徹底しているという。

 近年、ネット通販の増加により宅配便の荷量が増加。再配達による配達員の負担についてクローズアップされたことで、物流に対する消費者の関心も高くなりつつある。この社会の認識はトラック運送業者にとって追い風だ、と齊藤教授は指摘する。「経営者が荷主に対して、待ち時間の削減や作業の効率化、作業に必要な労働力など、正当な理由を示し、運賃の引き上げを交渉することが必要。今こそ経営者の覚悟が求められているのでは」

 飯沼社長は言う。「人材は貴重な財産。長時間労働はさせられない。適正な再生産ができる運賃をもらえるよう交渉し、労働再配分できる業界にしていかなければ」


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