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【トラック物流危機 神奈川の現場から(上)】死活 人手が足りない

社会 神奈川新聞  2018年02月04日 10:40

国内貨物輸送の9割を支えるトラック物流
国内貨物輸送の9割を支えるトラック物流

 「赤字に転落する前に事業を畳みたい」-。昨秋届いた退会届に、県トラック協会の石橋廣専務は「とうとう労務倒産の波が押し寄せるのか」とため息をついた。

 2014年ごろから顕著になってきたトラックドライバー不足。この事業者は、長い付き合いの荷主から「荷量が増加したのでトラック台数を増やしてほしい」と要望を受けた。しかし、人員不足で対応できず徐々に荷物を減らされ、最終的には他の業者に切り替えられた。新規開拓もままならず、ドライバーの高齢化も加わり、事業継続を断念するに至った。

 

「仕事を断る」

 
 17年7月に同協会が行った調査では、回答した455社のうちの54・7%が「労働力不足を実感している」と回答。ドライバー不足のため「輸送や作業を断っている」と回答した事業者は41・1%に上った。

 業界を取り巻く構造的な問題を浮き彫りにするデータがある。帝国データバンク横浜支店によると、県内倒産件数のうち「運輸・通信業」は16年の19件から、17年は24件へと、26・3%増加した。ドライバー不足による受注減少や、外注・人件費の高騰による採算悪化が背景にある、と担当者は分析する。

 従来、倒産の要因になってきたのは、燃料代の高騰などコスト高による業況悪化だった。しかし、17年を境に状況が変化してきたという。ドライバー側も人手不足を実感しているため、少しでも条件の良い事業者があれば転職してしまうケースも多い。賃金を上げれば利益を圧迫し、資金繰りは厳しくなる-。

若者も車離れ 


 ドライバー不足の大きな要因は「長時間労働と低賃金」だと石橋専務は言う。ドライバー全体の高齢化も問題だ。協会の調査では、17年に採用したドライバーの年齢は40代(35・8%)が最多で、50代(25・6%)がそれに続く。20代は10・3%、10代は0・6%。若い世代のドライバーの減少が著しいことが分かる。「業界のイメージ自体があまり良くない上に、車に興味のない若者が増え、免許取得率も下がっている。合同面接会にトラック業者が単独で出展しても、なかなか人が集まらない状況だ」

 労働環境を改善するためには、荷主と交渉し、十分なドライバーが確保できるだけの運賃を支払ってもらうことが不可欠だ。協会は経済団体への働きかけなどを行い、荷主企業への理解を広めようと活動を展開。各事業者にも荷主と交渉を行うよう啓発を行っている。「業界のエゴから訴えているわけではない。トラック運送事業が崩壊すれば日本経済全体にダメージが及ぶことになる」


 日常の買い物から企業の生産活動まで、すべての経済活動を支える国内の貨物輸送は、実はその9割(重量ベース)をトラックが支えている。トラックドライバー不足が全国的に叫ばれ、大手宅配業者の値上げが相次ぐ中、県内のトラック運送業者も事業継続のための重大な局面を迎えている。


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