相模原市緑区の県立知的障害者施設「津久井やまゆり園」で2016年7月、入所者ら45人が殺傷された事件で、殺人などの罪に問われた元職員植松聖被告(30)の裁判員裁判の第9回公判が27日、横浜地裁(青沼潔裁判長)であった。24日に続いて被告人質問が行われ、被告は重度障害者について「小中学校時代の経験も踏まえて必要ないと思った」と述べた。幼少期から障害者への差別意識を持ち、園で働く過程で膨らませていった実態が浮かんだ。
27日は弁護側、検察側双方が質問した。小学校時代に知的障害のある同級生がいたといい、「奇声を上げて走り回る姿に親や先生が苦労している」と感じたという。大学時代の教育実習で障害者施設を訪れ介助をした際にも「いる意味があるのかと思った」とした。
園職員として働き始めると、裸で立ち歩いたり流動食を食べたりしている入所者に「驚いた」と説明。同僚から「2、3年やれば分かるよ」と言われたといい、「(入所者が)人間扱いされておらず、いらないと思った」と振り返った。
その時期にニュースで世界の紛争や難民などの存在を知り、「金の奪い合いが原因になっていると思った」と回顧。意思疎通の取れない重度障害者に「お金を使っている場合ではない。彼らが不幸の元になっていると気付いた」と述べた。
さらに、事件の約半年前に衆院議長公邸に殺害予告の手紙を持参した後、措置入院していた時期に殺害を決意したと説明。「国から許可が得られなかったため、自分でやるしかないと考えた」と語った。
被害者の大半が匿名で審理されている今回の裁判には、「匿名裁判というのが、重度障害者の問題を浮き彫りにしている。施設に預けるのは、家族の負担になっているということだ」などと持論を展開した。