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【逗子ストーカー事件:解説】全国自治体への警鐘に

社会 神奈川新聞  2018年01月16日 11:06

三好梨絵さんの遺影を前に会見に臨む夫=15日午後5時ごろ、横浜市中区
三好梨絵さんの遺影を前に会見に臨む夫=15日午後5時ごろ、横浜市中区

 結果的に最悪の事態を招くきっかけとなった逗子市の情報漏えい行為を、判決は厳しく指弾した。認定された賠償額はプライバシー権侵害の訴訟としては過去の事例と比較しても高額とされ、個人情報の管理を巡り全国の自治体にとって重い警鐘にもなりそうだ。

 殺人事件という結果の重大性を考えると、今回の認定額は一見すると安価にも映る。しかし訴訟上の市への請求は、あくまでプライバシー権が侵害されたことの対価だ。殺害の責任を負うべきは元交際相手の男であり、判決も梨絵さんが死亡した結果を慰謝料算定の要素には含めなかった。

 むしろ判決が重視したのは、梨絵さんの個人情報に閲覧制限が掛けられていた点だった。梨絵さんが執拗(しつよう)なストーカー行為に悩まされてきた経緯も踏まえ、「住所は被害者の生命身体の安全に関わる重要情報」と指摘。閲覧制限の要請が市側の過失で無に帰したとまで非難した。

 行政や企業による情報漏えいの訴訟で、従来許容されてきた賠償額は数万円程度が相場とされる。ただしこれは、情報流出による被害が漏らされた側の漠然とした不安感にとどまるためだ。命まで奪われたストーカー被害者が個人情報の要保護性を正面から訴えた事例は今回が初とみられる。

 「生命に関わる情報」の流出にいくらで報いるのが妥当か、判断は容易ではないが、今回の判決が一つの指標となり再発防止につながることが期待される。


横浜地裁横須賀支部
横浜地裁横須賀支部

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