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トップが語る教育現場の未来
人間とAI 長所生かした教育「城南予備校DUO」始動へ

神奈川新聞  2020年01月15日 13:07

(左)神奈川新聞社 並木裕之社長(右)城南進学研究社 下村勝己社長

 少子化の進行や生産人口の減少などを背景に、2020年度から実施される大学入試制度改革。大学受験を取り巻く環境の大きな変化に対応するため、城南進学研究社は、基幹事業として運営してきた「城南予備校」を来年度より「城南予備校DUO」に移行することを発表した。培ってきた受験ノウハウを生かしながら、ICT(情報通信技術)やAI(人工知能)などの最新技術を活用し、個人に最適化した教育サービスを提供するのが狙いだ。生徒第一主義の理念を掲げ、地域に根差した「総合教育ソリューション企業」を目指す同社の下村勝己社長に、神奈川新聞社の並木裕之社長と教育現場の現状と未来などを語り合っていただいた。(文中敬称略)
司会・神奈川新聞社デジタルビジネス局局長 篠田学

AIを教育現場に活用


城南予備校DUO蒲田校での、AI教材を用いた個別指導風景。スタッフが生徒の進捗状況を確認し、必要に応じて指導を行う。

 —昨年11月、予備校事業の再編を発表されました。その内容と目指す方向をご紹介ください。

 下村 大学受験に対する価値観は多様化し、予備校間の競争は激化の一途です。その中で、当社グループの企業価値を高め、さらなる発展を目指すために、基幹事業である「城南予備校」を「城南予備校DUO」へと移行します。

 今、ICTやAIの進歩は目覚ましいものがあります。私たちには、1961年の開校以来、59年間にわたって積み上げてきた学習指導に関するノウハウがあります。以前から、それを生かしながら、ICT、そしてAIを活用した新しい教育システムを構築しようと試みてきました。

 従来の授業型の指導方法は、いわば横並びに「前へ進めていく」指導です。しかし、それでは個々の生徒がどこでつまずいているかを発見することが難しい。学習の成果があがらないとき、その原因がどこにあるのかを即座に発見する、つまり、「後戻り」してみるのは、AIの得意とするところです。原因が見つかり、解消されると、まるで霧が晴れるように子どもたちの成績は向上します。

 子どもたちにはそれぞれ個性があり、おかれた状況も違います。一人一人に丁寧に対応し、抱えている課題を解決していく「個別最適化指導」こそ、これからの教育に欠かせないキーワードになるでしょう。プロの講師による少人数制演習指導と、AI教材を用いた個別指導こそ、「城南予備校DUO」の目指すものです。
 「城南予備校DUO」はすでに9校舎。今年3月までに、「城南予備校」5校舎も全て「城南予備校DUO」に変わります。

 並木 下村社長の言われた情報技術の急速な発達、価値観の多様化は教育業界にとどまるものではなく、社会全般を大きく動かすうねりとなっていますね。私たちもICTを活用した新聞編集・制作のシステムを導入し、運用が始まったところです。

 ICTの普及は、「一対多」の情報発信を前提としてきた報道の在り方を根本から問い直す契機と捉えています。

「個別最適化」を実証

 —御社が開発したICT教材「デキタス」が経産省の「未来の教室実証事業」(※)に採択され、横浜市立鴨居中学校(横浜市緑区)で運用が始まりました。

 下村 WEB学習システム「デキタス」は、城南進研グループの講師陣が監修した小中学生向けタブレット通信教材です。学校の教科書に対応した2〜5分のコンパクトな授業動画とアニメのキャラクター演出により、勉強が嫌いな子どもでも楽しく学習習慣が身につくように工夫されています。

 「大好きな数学が今できるということはとても幸せです。(中略)デキタスに出合ってから私の人生は変わりました!」。これは鴨居中学校の生徒からいただいた言葉ですが、このお子さんは学校の勉強が苦手でした。さまざまな状況にある子どもたち、成績のいい子も悪い子も、どちらも伸ばせるICT教材による個別最適化指導の可能性を、はっきり示していると思います。

 並木 ICT活用という面では、「箱根土曜塾」といった取り組みも成果を上げられているようですね。

 下村 2017年度より箱根町教育委員会と提携し、当社が運営する高校受験塾を、箱根町社会教育センターで開催しています。 
 1人に1台のタブレットを支給し、当社の講師の指導のもと、「デキタス」を使って学力を定着させます。半年間の指導期間で、出席率は90%近く、ほぼ全員志望校に合格できたと聞いています。

 並木 箱根町には大手の進学塾はなく、例えば、隣の小田原市まで行くのに約30分〜1時間かかります。そのため、進学塾に通いたくても通えない生徒がいると聞きました。まさに、教育現場でのICT活用の先行事例といえますね。将来的には、他の自治体にも広がっていくのではないでしょうか。

(※)子どもたちが、未来を創る当事者に育つための、新たな教育プログラムの開発などに向けた実証事業

共に生徒と向き合う


 —今、大学入試改革が進んでいます。大学受験についてはどのように位置付けておられますか。

 下村 大学受験への対応こそ、私たちの基幹事業です。それは今後も変わることはありません。

 大学入試改革が注目を集めていますが、国が進めている改革の背景には、少子化や生産人口の減少など、さまざまな問題があります。英語民間試験、共通テストの記述式問題の導入見送りなど、内容に議論はありますが、対応はしていかなければなりません。例えば、英語4技能に関しては、「5Codes English」という画期的なメソッドを開発。改革に向けた取り組みを進めています。

 並木 今後、ICTやAIは教育現場にどのように生かされ、また、人間との役割分担はどのようになるのでしょうか。

 下村 講師の個人的な能力、日々のコンディションなどに左右されず、安定した指導ができる点などがAIの良さです。ただし、AIはあくまでもツール、「使いこなす」という視点が大切です。 

 「DUO」とは、もともとギリシア語の2を意味する言葉で二人組を意味します。人間とAIが共に生徒と向き合い、サポートしていこうということです。これは、当社の行動規範の最初に掲げた「生徒のやる気を向上させる伴走者として全力を尽くします」という精神にも合致します。

 並木 AI技術を使いこなしながら、伴走者である講師がしっかりコーチングをしていく、ということですね。

 下村 その通りです。ある程度の水準まではAIでいけるのですが、難関校のレベルを狙うとなると、プロフェッショナルな講師の指導力は欠かせません。

 並木 新聞社にも日々膨大な情報が集まり、その中から抽出した情報を取材し、紙面やウェブに反映します。ここにAI技術が加わると、人手だけでは難しかった多角的な情報分析など報道の可能性も大きく広がっていきます。来るべき時代に備え、記者にもよりよい取材と編集スキルを上げる組織づくりを進めているところです。「城南予備校DUO」の理念と方法論は、受験対策だけでなく、我々社会人教育にも有用なのではないでしょうか。  —人材育成について、どのようにお考えですか。

 下村 私たちは教育事業の対象年齢層を広げていき、総合教育ソリューション企業を目指すという方向に舵をとっています。例えば0歳からの育脳教室は、社会に出てから、生きる力の強い子を育てることが目的です。また、スポーツクラブ事業では、およそ3千人の子どもたちが心と体を鍛えています。お預かりするお子さんの人生を明るく輝けるものに。それが私たちの願いです。

 並木 神奈川県は教育熱の高い土地柄でもあります。次代を担う子どもたちに楽しく豊かな社会を引き継いでいく、それは私たちの使命だと思います。技術や文化を伝承し、永続的に社会を発展させていく、その力を養うために「教育」は欠かせません。そのフロントランナーである御社の新たな取り組みに、大きな期待をしています。

【PROFILE】

株式会社城南進学研究社 代表取締役社長CEO下村勝己氏。1961年に川崎で創業した「城南予備校」を前身に82年に設立。神奈川県内で事業拡大し、96年川崎駅前に本社を移転。99年に日本証券業協会(現東証JASDAQスタンダード)に上場。城南進研グループとして「生徒第一主義」を掲げ、大学受験の「城南予備校」「城南AO推薦塾」「城南医志塾」個別指導の「城南コベッツ」などを軸に、0歳からの育脳教室「くぼたのうけん」や認可保育園、スポーツ事業(スイミングクラブ)の運営など、乳幼児から社会人までを対象とした教育サービスを提供する、総合教育ソリューション企業。昨年11月、これまでの基幹事業であった「城南予備校」を、来年度から「城南予備校DUO」に再編することを発表。


下村勝己(しもむら かつみ)社長 1950年東京都出身。中央大学卒業。77年独逸機械貿易株式会社を設立(現取締役会長)。82年、当時実兄が代表取締役を務めていた当社取締役に就任。85年に実兄が急逝し、当社代表取締役社長に就任する。「生徒第一主義」の理念を持ち、クレド(理念)に基づいた質の高いサービスを提供するための人材育成を重視している。


企画制作:神奈川新聞社デジタルビジネス局


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