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地域力担う人々
NPOと行政結ぶ 大岡川清掃 「市民の意識変えたい」

社会 神奈川新聞  2018年01月09日 10:20

川底に沈んでいた自転車を引き揚げる豊田さん(中央)ら =横浜市中区の大岡川
川底に沈んでいた自転車を引き揚げる豊田さん(中央)ら =横浜市中区の大岡川

 海の汚れを、川で食い止めたい-。NPO法人「海の森・山の森事務局」理事長で写真家の豊田直之さん(58)=横浜市港北区=は、横浜の中心市街地を流れる大岡川で毎月、仲間たちとともに清掃活動を行っている。桜並木が有名な観光コースだが、ポイ捨てや不法投棄がなくならない。地道なボランティア活動に共感する市民が増え、行政も観光資源として関心を寄せ始めた。

 豊田さんたちは2015年から大岡川の清掃活動をスタート。毎月第1土曜日は南区の井土ケ谷周辺、第3土曜日は中区の「大岡川桜桟橋」周辺で行っている。この桟橋を拠点にマリンスポーツのスタンドアップパドルボード(SUP)を楽しむ横浜SUP倶楽部などの団体と連携したりしながら参加者を増やしてきた。

 昨年12月9日。大岡川周辺で2時間かけて拾ったたばこの吸い殻は約1万1千本に達した。これまで1日での最多記録だった約7500本を大幅に上回った。豊田さんは「路肩に止めた車から捨てている」とため息をついた。

 川が汚れる理由はさまざまだ。ポイ捨てのほか、家庭ごみが風や雨、カラスによって周囲に散らばり、川に落ちるケースもある。特にペットボトルやレジ袋などが川から海を漂ううちに細かな粒子「マイクロプラスチック」に分解され、生態系に及ぼす悪影響が懸念されている。

 大岡川は延長12キロ。同市磯子、港南、南、中区を流れる。大岡川に関わる行政機関は多岐に及ぶため、ごみ問題はこれまで行政から注目されてこなかった。

 2級河川の大岡川は県が維持管理するが、河口部は市港湾局の管轄となる。流域はいくつもの区役所、橋は市道路局が所管するなど、市の内部でも行政域が複雑だ。

 そこで豊田さんたちは、各種会合やイベントに積極的に顔を出して、県横浜川崎治水事務所や市の各部局の担当者と関係を築いた。横浜SUP倶楽部とともに市資源循環局に働き掛け、参加者が分類することを前提にごみを収集する仕組みが16年に整った。川での事故や不法投棄などでは県警との連携も始まった。

 「行政機関も一緒に大岡川を活性化することで、ごみ問題への市民の意識を改めることができないか」

 横浜商工会議所を通じた申請が実り、県は昨年9月、大岡川を県の地域産業資源に指定した。「観光客が大勢訪れるようになれば、大岡川の魅力を認める市民がさらに増えるはず」と豊田さんは期待する。

 12年1月に設立したNPO法人の理念は「自然の尊さを伝えたい」。季節感にあふれ動植物が暮らす様子を写真と記事で伝える季刊誌「大岡川ニュース」を16年7月に創刊した。3千部から始めたところ、サポーターが増えて5千部に。来春号は8千部に増刷する見込みだ。

 NPO法人は、行政域や地域の枠を超えて活動し、連携の要として存在感を発揮できることが強みだ。豊田さんは「氷取沢市民の森」(同市磯子区)にある源流から横浜港に注ぐ河口まで、流域の市民らが一斉に清掃するイベントの開催を夢見ている。


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