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女子の制服にスラックスも 平塚・太洋中「固定観念から解放」

社会 神奈川新聞  2018年01月08日 02:00

女子生徒用のスラックスが採用された平塚市立太洋中学校の新年度からの制服
女子生徒用のスラックスが採用された平塚市立太洋中学校の新年度からの制服

 平塚市立太洋中学校(同市高浜台、栗木雄剛校長)は2018年度から制服を一新し、女子ではスカートとスラックスを採用する。どちらかが主ではなく、自由に選べる同列の扱いといい、同市内の公立中学では初めての導入だ。栗木校長は「スカートがメインでないことを示したい。男女らしさはあってもいいが、固定概念から解放してあげてもいいのでは」と、多様性を尊重する風土の醸成に期待を寄せる。

 創立70周年に合わせて制服を新しくするのに当たって、同校は各地の中学や高校で導入が進んでいる女子のスラックスを採用しようと検討してきた。

 背景として、性的少数者の子どもが制服への悩みを抱えているとの話が近隣にあったことを挙げる。生まれつきの性と自覚する性が異なるトランスジェンダーの生徒がスカートを嫌い、不登校になるケースも報告されている。栗木校長は「生徒の名簿でも男女一緒。男女差をつける風潮がないこともあり、制服でも男女差をなくそうと意識した」と話す。

 スラックスは冬場の防寒用として採用される事例もあるが、同校では意識的にスカートと同列にスラックスを位置付けた。将来の生徒となる近くの小学校のPTAも交えて話し合いを進めたが、保護者からも異論はなかったという。

 新入生向けに見本として男子用、女子スカート、同スラックスの3対を常にセットで展示していくのも、同列に扱う表れ。担当する制服メーカーは「女子生徒用のスラックスに、ここまで重きを置いた例は聞いたことがない」と注目している。

 試着した2年生の西澤依里さん(14)は「普段着からズボンをはいているので違和感がなく、スカートより動きやすく歩きやすい。スカートの下にジャージーを着ている子もいるので寒くなくていい」と高評価。同校では約30人が自転車登校をしており「女子生徒の役に立ちそう」とも話した。

 新しい制服のエンブレムは、保全活動を続けるハマヒルガオや学校近くの海や砂浜を青の濃淡を用いて生徒がデザインした。栗木校長は「新しい太洋中をつくっていく気風、生徒自らがつくっていくその象徴になれば」と期待している。

「個人の感覚大切に」性的少数者ら歓迎



 女子の制服にスラックスを導入する動きについて、心と体の性が異なる当事者や性的少数者の支援者からは歓迎の声が上がった。一方、スラックスを選んでも自然と受け入れられる学校の環境づくりや、性的少数者への配慮だけにとどまらず、生徒一人一人の感覚を尊重することも教育現場に求めている。

 「制服を理由に学校を苦痛に感じる子が一人でも減ってほしい」。こう話すのは川崎市出身の大学生、はるきさん(19)。女性として生まれたが、自認する性は男性だ。

 小学生の頃に自身の性に違和感を覚え、その戸惑いは中学校に入ってから一層膨らんだ。男女で違いが明らかな制服は、はるきさんにとって「望まない異性装」。毎朝、袖を通し、着替え終えるまで30分もかかっていたという。

 強いストレスで登校前に嘔吐(おうと)することが増え、2年の夏から足が遠のく。ジャージー姿でテストだけを受けに行き、卒業後は制服のない高校に進んだ。希望校はほかにあったが、「私服で通えること」が譲れない条件だった。

 「制服が理由で望む進路を諦める子も少なくない。制服やセクシュアリティー(性の在り方)で進路が左右されることがあってはならない」と、はるきさん。制服の着用パターンが増えることは、性別違和に悩む子どもたちだけでなく、望む格好をしたいと願う全ての生徒にとって有意義な取り組みだと評価する。

 また、教員や生徒の理解を深めることも重要と強調する。「誰がどのような制服を選択しても受け入れる環境を整える」「選ぶ理由を強制的に尋ねない」といった認識を校内で共有することの大切さを訴える。

 一方、性的少数者への支援に取り組む山下敏雅弁護士は「多様性を尊重する動きはいいこと。第二次性徴で体の変化とともに制服に苦しみ、不登校になるケースもある」と指摘する。

 かつて男児が黒、女児が赤と固定化されていたランドセルがカラフルになったり、性差に関係なくズボンが好きな女子生徒もいたりする例を挙げ、「性的少数者という観点だけでなく、一人一人の感覚を大切にし、押し付けないことが大前提。男らしさ女らしさだけでなく、全体の問題として考えてほしい」とも提言した。


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