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老眼鏡が結んだ日・タイの絆 川崎の眼鏡店、寄贈20年

話題 神奈川新聞  2020年01月13日 05:50

 使わなくなった老眼鏡をタイの人々に手渡しで無料提供するボランティアが2019年で20周年を迎えた。初期から活動の中心を担ってきた「メガネのオーサカ」(川崎市中原区)の大坂邦治社長(77)は「あっという間の20年」と感慨深そうに振り返る。これまでに配った累計7万本を超える眼鏡は、日本とタイの懸け橋になっている。


20年の功績をたたえた盾と感謝の寄せ書きを手にする大坂亮志店長(左)と高橋さん=川崎市中原区のメガネのオーサカ
20年の功績をたたえた盾と感謝の寄せ書きを手にする大坂亮志店長(左)と高橋さん=川崎市中原区のメガネのオーサカ

 19年10月、タイ中部のチョンブリ県にあるスイラーシャ寺院には、高品質な日本の眼鏡を求めて大勢の人々が列をなしていた。

 簡単な視力検査の後、各人に適した度数の老眼鏡を提供する。だが、それだけではない。「ここからがわれわれが現地まで赴いている意義」とは参加した同店スタッフの高橋啓論さん(41)。鼻あての幅や耳かけの位置など、より長く快適に使えるように一人一人に微調整を施している。

 売れ残った商品や客が持ち込んだ古い眼鏡を有効活用しようと、1999年に全国から眼鏡店の有志が集まり、取り組みを始めた。NPO法人「日本─タイ王国メガネボランティアグループ」を設立。20回目の今回は10店が参加し、2日間の活動で持ち寄った計約2千本を全て配りきった。

 「老眼鏡もかけたことがないとか、初歩の段階で困っている人がたくさんいる」と大坂社長の長男、亮志店長(43)。タイでは17年に高齢者(60歳以上)の割合が17%を突破。多くが経済的に苦しんでいて家族や政府の支援に頼らざるを得ず、眼鏡にまで金をかけられないのが現状だという。


活動に参加し、現地の人々に眼鏡の微調整を施す高橋さん(左)=2019年10月、タイ
活動に参加し、現地の人々に眼鏡の微調整を施す高橋さん(左)=2019年10月、タイ

 「本当にすごくよく見える」「こんなぴったりな眼鏡は初めて」─。普段の仕事であまり味わうことのない感謝の言葉の数々。その瞬間が何よりもうれしい。大坂社長は「手を合わせて感謝を表現してくれる。思い返すとこみ上げてくるね」。毎年もらう寄せ書きは店に大事に保管してある。

 11年3月の東日本大震災では、大坂社長が宮城県南三陸町の避難所などに駆け付け、被災して眼鏡を壊したりなくしたりした高齢者らに老眼鏡をプレゼントした。「これまでタイでボランティアをしてきた経験があったからこそ、すぐ行動に移すことができた」と誇らしげに語る。

 20年がたち、一つの過渡期を迎えたとも考えている。大坂社長は言う。「タイも最近は経済状況がすごく良くなってきている。うれしい限り。今後も活動が求められるのか、立ち止まって考えたい」。それでも取り組みを知った客からの眼鏡の寄付は今も尽きない。「絶やしたくはない。この思いをつなげていきたい」


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