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訪日客受け皿と生活環境…どう両立
民泊、ルール作り加速 6月解禁へ自治体独自規制も

社会 神奈川新聞  2018年01月04日 10:53

民泊特区の東京都大田区で営業している施設。日本の生活様式が体験できると外国人観光客にも好評だ(百戦錬磨提供)
民泊特区の東京都大田区で営業している施設。日本の生活様式が体験できると外国人観光客にも好評だ(百戦錬磨提供)

 一般住宅に旅行者を有料で宿泊させる「民泊」を解禁する住宅宿泊事業法(民泊新法)の2018年6月施行を控え、全国の自治体で営業日数や地域などに独自の制限を設ける動きが出ている。県内でも横浜市が条例骨子案を作成、県も条例化を視野に調整中だ。急増する外国人旅行者の受け皿と住民の生活環境の維持をどう両立させるか、ルール作りが急がれる。

 横浜市は低層住居専用地域で祝日を除く月~木曜に民泊事業を制限する条例の骨子案を作成し、18年3月の施行を目指す。

 市が17年に民泊サイトなどを基に行った市内調査では、既に少なくとも約300件の民泊を確認。多くは無許可とみられる。最多の中区(85件)など市心部が中心だが、港北区(25件)や青葉区(16件)など都内にアクセスのよい郊外にも広がっており、立地別では市条例で平日の営業制限をかける予定の低層住居専用地域も14・9%(44件)に上っていた。

 市には民泊について3年前から年間10件前後の苦情があり、「騒音が迷惑」「見知らぬ人が出入りしている」などの声が寄せられている。市は「居住地としての横浜の都市ブランドを守る必要もある」として、平日の静穏な環境維持と生活環境の悪化防止を目的に条例を制定したい考えだ。

 民泊を巡っては、京都市が住居専用地域での民泊営業を閑散期の1~2月に絞る条例案を検討。東京都新宿区も同地域で月曜正午から金曜正午までの民泊営業を禁止する独自条例を成立させた。

 外国人観光客の急増で、既に東京、京都、大阪などの人気観光地ではホテルや旅館が予約しにくくなっており、2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて観光客が増え続ければ宿泊施設はさらに不足すると予想される。

 県は18年の外国人旅行者の県内訪問者数の目標値を、現行の約1・5倍となる298万人に上方修正。受け入れ態勢を充実させ、ホテル誘致に加えて民泊も推進する方針だが、9市町から生活環境維持のための規制を求める要望があり、条例化も視野に調整を進めている。

 横浜市の調査では、民泊の1泊当たりの最低宿泊料金の平均値は6147円で、旅館などの許可物件の全国平均値約1万6千円の半額以下。外国人だけでなく日本人の観光客やビジネス利用も想定される。市は「条例制定と合わせて無届け施設への指導などにも取り組み、市民の不安解消に努めたい」と話している。

違法施設、特区悩ます




 東京都大田区では2016年1月から国家戦略特区を活用した特区民泊を導入。一方で住宅専用地域や工業地域での営業を全面禁止する条例も17年12月に成立させ、区独自の民泊施策に取り組んでいる。

 内閣府の調査によると、制度開始から16年度末までの1年余りに、同区の民泊に771人が滞在。6割が観光やビジネス利用の外国人だが、4割は日本人で、ビジネスマンの東京出張や在外邦人の一時帰国、学生の就職活動にも使われるなど、羽田空港に近い立地が好まれているようだ。

 同区では17年12月末現在で、264居室を特区民泊として認定。特区は通常の民泊と違って一年中運用が可能で、民泊使用目的でマンションを建てるケースもあり、認定数は月2~3件のペースで増えている。

 同区では認定基準に滞在者の本人確認の義務付けや、災害や急病時に外国語で対応できる体制の確保などを盛り込んだ。近隣住民からのクレームに対して改善の見込みがない場合などは、認定を取り消すこともできる。苦情は数件にとどまる。

 だが違法民泊には悩まされており、夜中の騒音やごみの捨て方などの近隣住民の問い合わせで27の無許可施設を確認している(12月27日現在)。民泊仲介サイトに掲載されている数から推計すると、約300~500居室の違法民泊が存在する可能性があるという。

 公認民泊のみを扱う仲介サイトを運営する百戦錬磨(仙台市)は、グループ会社が大田区内で認定物件を持つ。同社は「違法民泊との違いは、近隣の方への配慮。事前の話し合いを重ね、連絡先を明確にしている。消防設備を含めて認定を得るハードルは高かったが、安心安全のためには大切だ」と話す。 

 

民泊 旅行者に住宅を有料で提供する宿泊形態。比較的安価で、日本での生活が体験できると外国人旅行者に人気がある。現在は、旅館業法に基づき簡易宿所の許可を得るか、国家戦略特区に指定された地域で首長の認定が必要。政府は2020年東京五輪・パラリンピックに向けて民泊を推進するため、届け出をすれば誰でもどこでも営業を可能とする住宅宿泊事業法を18年6月に施行する。住環境の悪化が懸念される場合、都道府県の他、政令市、中核市などが年間180日の営業日数の上限を引き下げたり地域を制限したりできる。


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