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中華街摩登(48)
障害者も楽しめる本格中華を 刻み、裏ごし…「喜ばれる」

話題 神奈川新聞  2018年01月03日 02:00

 年間2千万人以上の観光客が訪れる横浜中華街(横浜市中区)。その一角に、障害者や高齢者が安心して本場の味を楽しめる中華料理店がある。広東料理「福養軒」。注文があれば、食材の切り方から味付けまで工夫を凝らす。病気や加齢などでのみ込むのが難しくなった人にも食べやすく加工した、いわゆる「配慮食」。口コミなどで評判がじわりと広がり、県内外からリピーター客が増えている。


「プロとしてリクエストに応えたい」と話す3代目の譚学彰さん(左)=横浜市中区の「福養軒」
「プロとしてリクエストに応えたい」と話す3代目の譚学彰さん(左)=横浜市中区の「福養軒」

 JR石川町駅から歩くこと約5分。西門通り沿いにたたずむ店は、大正末期開業という老舗だ。本格的な中華料理を手ごろな値段で食べられ、3代目の譚学彰さん(43)が両親とともに切り盛りする家庭的な雰囲気が地域の幅広い年齢層から愛されている。

 近ごろ、新たな“お得意さん”が加わった。かんだりのみ込んだりするのが苦手な障害者や高齢者だ。

 夏を過ぎたころから11月いっぱいにかけ、特別支援学校などの修学旅行や遠足での利用が相次ぐ。車いすを使った身体障害者と引率の教職員ら20人程度に対応することも珍しくない。

 ランチで提供するのは、「エビと玉子(たまご)のうま味炒め」や「肉と豆腐の黒豆炒め」、「豚の味噌煮(みそに)」。どれも店の定番メニューだ。障害の程度に応じて材料を細かく刻んだり、ミキサーにかけて柔らかく固めたり、ミキサーにかけた食材を裏ごしたりと柔軟に対応する。味や香り、見た目にもこだわっている。

 6年ほど前、市内の特別支援学校から「料理を加工して出してもらえないか」との相談を受けたのがきっかけだ。「試行錯誤だったが、やってみたら意外と面白かった。何より、喜んでもらえてやりがいがあった」と譚さん。

 ミスマッチをなくすための工夫も欠かさない。担当者に足を運んでもらい、店の設備やスペース、段差、味付けなどを事前に確認してもらう。「横浜中華街で同じものを食べたという共通の思い出をつくるためのお手伝いがしたい」(譚さん)という思いからだ。

 口コミや店のホームページを見たという特別支援学校や旅行会社などからの問い合わせが次第に増え、今では埼玉や千葉、茨城などからも予約が入る。当初は年1、2件だったが、昨年10月は2日に1件のペースで店を訪れた。

 体の不自由な人にとって外食はハードルが高く、食の要望に応えてくれる飲食店の情報も少ない。

 昨年、小学部の修学旅行で同店を初めて利用した県立金沢養護学校(横浜市金沢区)の担当教諭は「加工する手間がかかるため、敬遠されがち。ここまで対応してくれるところは少ない」。学校同士の情報交換はまれで、自分たちで本やインターネットを使って探すしかないという。


ミキサーにかけて柔らかく固めた「チャーシュー麺」。彩りも鮮やかだ
ミキサーにかけて柔らかく固めた「チャーシュー麺」。彩りも鮮やかだ

 横浜中華街発展会協同組合によると、車いす用トイレやエレベーターなどがある店舗を紹介しているが、配慮食を提供している店舗は把握しておらず、個別に問い合わせてもらっている。横浜市も市内で対応できる飲食店の情報を把握していないという。

 昨年春、譚さんは重度の肢体不自由者を訪問介護する「重度訪問介護従業者」の資格を取った。2日間の研修で、電動車いすを使う脳性まひの女性から外出先での食事の難しさを聞いてさらに確信を深めた。今後は配慮食をコースメニューにも広げたいと構想中だ。

 〈とってもおいしかったです。またいきたいです〉。店の壁には、折り紙や写真がちりばめられたお礼の手紙が並ぶ。「プロとしてお客さんのリクエストに応えているだけ。特別なことをしているわけじゃない。でも、こういうのってうれしいですね」。目を細め、譚さんが笑った。

 火曜日定休。営業時間は午前11時半~午後9時。問い合わせは福養軒電話045(681)2370。


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