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やまゆり園 事件考
検察・弁護、責任能力巡る攻防 被告の「闇」は何か

社会 | 神奈川新聞 | 2020年1月9日(木) 01:54

 「意思疎通ができない障害者はいらない」─。入所者ら45人が殺傷された「やまゆり園事件」から3年半。殺人などの罪に問われた元職員植松聖被告(29)が初公判の法廷に立った。最大の争点である被告の責任能力の有無を巡り、検察側と弁護側の主張が真っ向から対立。被害者家族らが公判の行方を見つめる中、差別と向き合う裁判が始まった。

やまゆり園事件初公判 検察側・弁護側冒頭陳述要旨

襲撃に備えて


植松聖被告の裁判員裁判公判が開かれる横浜地裁の法廷=1月8日午前、横浜市(代表撮影)
植松聖被告の裁判員裁判公判が開かれる横浜地裁の法廷=1月8日午前、横浜市(代表撮影)

 「被告は犯行時、完全責任能力を有していた」

 午後1時20分すぎ、被告不在のまま再開した午後の審理。冒頭陳述で検察側は前方に並ぶ裁判員にそう訴え掛け、犯行に至る動機がどのように形成され、襲撃がいかに周到に進められたのかを丁寧に説明した。

 検察側によると、被告はやまゆり園で働き始めた当初こそ、周囲に入所者のことを「かわいい」と話していたが、次第に「不幸を生み出す存在」との思いが芽生えた。その後、世界情勢に興味を持ち始め、「金を別に回した方がいい」と障害者の殺害に思い至ったという。

 実行に向けて動きだしたのは2016年2月。衆院議長宛てに犯行を予告する手紙を出し、園を退職。措置入院が解除されてからは襲撃に備え、ムエタイジムで体を鍛えたり、自分の考えを信用してもらうために美容整形を施したりした。

 襲撃当日は事前の計画通り、5本の刃物と結束バンド、ガムテープを持参し、職員の少ない夜間に侵入。夜勤職員を拘束しながら意思疎通できない入所者を選んで犯行に及んだ。

 当初、心臓を狙って胸を刺していたが、包丁が骨に当たって曲がったり折れたりしたため首に狙いを変更。職員の拘束に失敗すると逃走を決心し、手当たり次第刺していったという。

 こうした経緯を踏まえ、検察側は▽動機の形成過程が不自然ではない▽計画性が認められる▽行動が一貫しており、理にかなっている-などの点を強調。逃走後、津久井署に出頭していることから違法性を認識していたとも指摘し、「当時の被告の精神状態は正常だった」と述べた。

「世界を変える」

 15年を境に「別の人」に変わった-。被告の刑事責任能力を否定する弁護側は冒頭陳述でそう繰り返し、無罪の論陣を張った。その原因に挙げたのが、大麻の乱用による精神障害だ。人格の変容を明らかにするため「本来の植松さんを知る必要がある」と、生い立ちから切り出した。

 
 

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