バレーボールの全日本高校選手権第3日は7日、東京・調布市武蔵野の森総合スポーツプラザで3回戦と準々決勝が行われ、男子は神奈川代表の慶応と橘がそれぞれ3回戦で敗退した。
慶応 躍進導いた主将島田
嗚咽(おえつ)が止まらなかった。主将だから、エースだから、3年生唯一の主力だから─。慶応の島田が押さえ込んでいた激情は、任が解かれた瞬間、止めどなく流れた。
幕切れがちらつく第2セット終盤も顔色一つ変えずトスを待った。もともと感情を表に出すタイプではない。だが、「2回戦でふがいないプレーをしてしまったので、自分が一番活躍して勝ちたかった」。3年前、描いた未来にどれだけ近づけただろう。
理想のエース像があった。慶応が初出場した2017年、中学3年だった少年は力強い背中に憧れた。当時の主将吉田祝太郎(慶大)。「吉田さんのスパイクがすごくて、どんなトスでも打ち切っていた。外から見ても頼もしかった」
パワーでは及ばなくても、フェイントを入れたり、ブロックを見てかわしてみたり。2度目の春高に導いたのは、磨いた技術のたまものだ。いや、それだけではない。
もう一枚のエース渡辺は言う。「どんなときでも冷静で、かつ乱れない。自分が崩れたときにすぐ声を掛けてくれる頼りがいのあるキャプテン」。どんな逆境にあっても、大黒柱がいたからここまで来られた。
「要所でスパイクを決めてくれた。もう少しキャプテンに任せていても良かった」。セッターの山本には悔いと敬意が入り交じり、渡辺は「一番勝ちにこだわっている方。センターコートに連れて行けなくて申し訳ない」と雪辱を誓う。
春からは慶大に進む。「大学で成長して、後輩たちの憧れの存在になれるように頑張りたい」と島田。再び同じコートに立ったとき、今以上に頼れる背中を見せられるように。
橘 躊躇し対応後手
第1セットが全てだった。24─23とリードした後に3連続失点。「躊躇(ちゅうちょ)してしまう部分があった」とエース梶原。ひりつくような逆転劇は橘に揺らぎを与えた。
年明けの練習試合では競り勝っている相手だった。「いいイメージはあったし、センター線も使える手応えがあった」とセッターの猿渡。だが、第1セット終盤以降は攻めどころを対応され、橘が誇る強力攻撃陣の翼はもがれた。