はだの都市農業支援センター(秦野市平沢)は、農業被害をもたらすイノシシの成獣を捕獲するため、箱わなに設置したセンサーで体高を識別し、成獣の高さであれば扉を閉める新たな方法を取り入れた。成獣の捕獲数が全体の3割にとどまっており、わなに触れずに餌を食べる知恵を付けたことが要因とみられる。まずは市内2カ所のわなにセンサーを設置。センターは「効果が上がれば、他の場所でも設置を検討したい」としている。
センターは昨年12月24日、同市堀西と寺山の2カ所に設置された箱わなに、センサーを取り付けた。
センサーで体温を感知し、わなの中にイノシシが侵入したことを確認。体高も計測し、60センチ以上の場合、わなの扉を閉めて捕獲する仕組みだ。設定した体高より小さい場合はそのまま逃がすという。
センターが捕獲に情報通信技術(ICT)を活用することを決めた背景に、捕獲数の内訳がある。
センターによると、箱わなは現在、市内に79基設置。3月から11月までにイノシシ計123頭を捕獲した。ただ多くは幼獣で、農地に深刻な被害を与える成獣は3割だった。農家からは「成獣が捕まらない」「わな周辺に足跡はあるが、おりの中に入らない」と嘆く声がセンターに寄せられているという。
成獣がなかなか捕まらない理由について、センターは「成獣がわなの仕組みを学習したとみられる」と説明する。
設置されている箱わなは、おりの中に入ったイノシシが内部のワイヤや鉄の棒に触れることで、扉が閉まる仕組みになっている。だが餌だけ食べられた例もあり、成獣がワイヤなどに触れないようにしていると考えられる。「イノシシも知恵を付けてきて、だまし合いになっている」と担当者。そこで成獣に狙いを定め、内部に触れなくても捕獲できる方法を考案した。
新たな捕獲方法や鳥獣被害対策は市議会12月定例会でも話題に上り、横山むらさき(公明)、原聡(創和会)、古木勝久(無所属)の3氏が一般質問した。
市環境産業部の石原学部長は、ICTの導入について「成獣を優先的に捕獲すれば、繁殖の抑制にもつながる」と説明。「他市の先進事例を収集するなど、秦野市の実情に合った効果的な活用方法を調査、研究したい」と答弁した。
センターによると、イノシシによる農業被害は17年度、5251アールで2230万9千円に上る。