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社会映す女性の肖像画 横須賀美術館

カルチャー 神奈川新聞  2016年10月04日 15:39

ルイ・バルタの「お針子」(トップ)に見入る来場者 =いずれも横須賀美術館
ルイ・バルタの「お針子」(トップ)に見入る来場者 =いずれも横須賀美術館

 1850年から約100年にわたってフランス絵画における女性像を集めた展覧会「女性を描く クールベ、ルノワールからマティスまで」が、横須賀美術館(横須賀市鴨居)で開催中だ。さまざまな芸術表現で描かれた女性たちの姿は、近代化が進み、変わっていく社会の様相も映し出している。

 当時のフランスでは産業化と機械化が進み、社会が大きく変化していった時代に当たる。同展では、47作家による約60点の女性像を「女性の肖像」「画家とモデル」「家庭の女性」「働く女性」「余暇(レジャー)」「夢の女性」の六つのテーマに分類し、さまざまな場面で女性たちに向けられたまなざしを紹介している。

豊かな暮らしぶり


 活発な経済活動によって台頭してきたのが、ブルジョアジーという新しい社会階級だった。大地主や実業家、職人、商人などで都市に生活の基盤を置いた。女性は美しいドレスや宝飾品を身に着けて、パーティーや観劇などの都会生活を楽しんだ。

 彼らは妻や娘などの家族の肖像画を依頼し、着飾った姿や豊かな暮らしぶりが垣間見える室内を描かせた。「女性の肖像」に並ぶセルベ・デティユの「赤い服の女性」では、しま模様の赤いドレスに黒い大きな羽根飾りのついた帽子をかぶった議員夫人が、体を反らせて鏡を見ている場面を描く。アールデコ様式の壁紙やドライフラワーの花束を飾った室内は、居心地の良さを演出している。

 「家庭の女性」に並ぶアルマン・ギョーマンの「読書するギョーマン夫人の肖像」では、漆塗りのついたてなど日本趣味で豪華に飾られたインテリアが目を引く。

風俗としての労働



 ブルジョア社会では、女性が賃金を得て働くことは貧困を意味し、絵画的にもテーマに選ばれてこなかった。機械化が進み、工場労働者が増加する時代に反するが、労働の悲惨さを絵で訴えることはなかった。

 だが奉公人や洗濯女、ガチョウ番などの農村の女性は風俗を描く対象として取り上げられた。「働く女性」の一角でもこうした女性たちの姿が見られる。

 ルイ・バルタの「お針子」はキュービズムの手法を取り入れた斬新な画面構成で、足を組んで熱心に仕事をする仕立屋の女性を描いている。黒い輪郭線をとり、その中を平面的に彩る緑や黄色、オレンジなどの鮮やかな色彩が印象的だ。

多様な芸術運動


 同展で取り上げた1850年からの1世紀は、パリが芸術の中心地となり、写実主義や印象派、新印象派、フォービズムといったさまざまな芸術運動が起こった時期でもある。

 「夢の女性」では現実の女性を描くことよりも、神秘的なイメージを追求した象徴主義の女性像が並ぶ。アンリ・マルタンは顔をはっきり描かず、精神的なイメージを美しく描いた。「調和」では、金色の植物を手にして野原にたたずむ女性の姿を幻想的に描き出している。

 同館の工藤香澄学芸員は「フランスの社会そのものがすごく変わった時代で、それを反映して絵も変わっていろいろなイズムが起こった。こうした多様性が見られるのがこの展覧会の魅力」と話した。

 23日まで。一般1200円、高校・大学生と65歳以上1000円。問い合わせは同館電話046(845)1211。


ファッションやインテリアも女性像の見どころの一つ
ファッションやインテリアも女性像の見どころの一つ

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