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刻む2017〈7〉混迷極めた衆院選

社会 神奈川新聞  2017年12月18日 10:18

街宣カーの上で立憲民主党の枝野代表(右)と演説する公認候補者ら =10月9日、横浜駅西口
街宣カーの上で立憲民主党の枝野代表(右)と演説する公認候補者ら =10月9日、横浜駅西口

 野党第1党の分裂で混迷を極めた10月の衆院選は、過去2回に続いて自民党が圧勝した。その一方、小池百合子代表(当時)の「排除」発言などで希望の党の人気が急落する中、その受け皿として立ち上がった立憲民主党が県内で躍進し、5人が議席を得た。特に現職の与党候補を負かし、全国的にも「立民旋風」の象徴区となった4、6、12区ではどんな戦いが繰り広げられていたのか-。舞台裏を見た記者が振り返る。 

「民主主義の勝利」12区



 「草の根の民主主義の勝利。市民の皆さん一人一人が私を押し上げてくれた」

 10月23日午前0時すぎ。NHKが当確を報じると、当選7回目にして初めて小選挙区を制した立憲民主党の阿部知子氏は集まった支援者らと抱き合った。

 阿部氏は民進党と希望の党との合流協議で「排除の論理」が叫ばれたことに危機感を覚え、枝野幸男氏らと立民を結党。「憲法に基づいた主権在民の政治」を掲げ、支援する市民らと草の根運動を展開した。

 選挙後、ボランティアとして電話で支援を呼び掛けた主婦(45)は言う。「自分のためにやったんです。阿部さんの政策は私自身が実現したいから。阿部さんは代弁者で選挙の主役は主権者である私たち国民」

 12区は立民・阿部知子、自民党・星野剛士、希望・原輝雄の3氏が出馬。当初は三つどもえも予想されたが、選挙戦が始まると市民の反応は顕著に表れた。

 日に日に支持を集めていく立民に対し、希望は失速、自民はいま一歩伸び悩んだ。

 星野氏の陣営には連日、安倍晋三首相、菅義偉官房長官ら大物弁士が応援に駆け付けたが、あるベテラン市議はつぶやく。「個人演説会を重ねて、街宣では大物弁士を呼んでアピールする。自民党らしい選挙戦をやっていれば以前は勝てたが、それが通用しなくなっている」

 安倍首相の応援演説を道端で聞いていた男性(60)はこう口にした。「昔の自民党政権はまともだったが、いまの安倍政権は違う。森友、加計学園問題一つとっても、その傲慢(ごうまん)さ、強引さは表れている。信用できない」。政権に対する不信感、不満は有権者の中に広がっていた。

 阿部氏陣営のボランティアとして戦った別の主婦(47)は力を込めて語る。「私たちはまっとうな政治を求めている。国民の声を大事にする政治家を応援したい。そんな意識が主権者である私たち国民に根付き始めている」

 勝利した阿部氏の言葉が思い出される。「民主主義は死なせない」


リベラルに追い風4区



 「よくぞ出てくれた」

 立憲民主党での出馬を決めてから、元県議の早稲田夕季氏はそう声を掛けられることが何度もあった。「今までになかった反応」だった。

 公認が決まっていた民進党は分裂騒動に揺れ、公示直前まで行く末が不透明な状態が続いた。枝野幸男代表が党を立ち上げると、「リベラルの灯は消さない」と即座に参加を表明。共産党は呼応するように候補者を取り下げた。

 4区には、衆院3回、参院2回当選の元みんなの党代表、浅尾慶一郎氏がいる。過去2度、比例復活している自民党公認の山本朋広氏も。三つどもえではあるものの、当初は関係者の多くが浅尾氏の優勢を予想していた。

 9月に自民党入りした浅尾氏は公示前、「4区で自民候補として戦えると思っている」と自信を見せた。しかし公認は得られず無所属に。一方の山本陣営は「唯一の公認候補」を訴えて大物弁士を続々投入し、小選挙区奪取を狙った。

 「自民分裂」の様相を尻目に早稲田氏は、選挙戦終盤になるにつれ「徐々に高まる期待」を感じていた。枝野代表は投開票前日を含め鎌倉市内へ2度来援。「枝野コール」とともに「早稲田コール」も湧き起こり、熱気に包まれた。

 投開票日直前の世論調査は早稲田、山本、浅尾の3氏が数ポイント差で団子状態。データの条件によって順位は入れ替わった。立民の勢いを肌身に感じながらの取材を加味しても、予想は困難を極めた。

 横浜市栄区、鎌倉市、逗子市、葉山町を抱える4区。とりわけ鎌倉はリベラル層が多いと言われる。山本氏と浅尾氏が保守票を食い合い、リベラル票の受け皿となった早稲田氏が立民への追い風を受け、初当選した。

 「2日くらい前かな」。雲行きの怪しさを感じたのは投開票日直前だったと、敗戦から一夜明けて浅尾氏はつぶやいた。「風が吹いたんでしょうね」

 ただ「次」は簡単には見通せない。早稲田氏の得票は6万7千票余り。山本氏と浅尾氏の票を合わせると10万を超える。保守の一本化、立民の党勢…。さまざまな因子次第で数年後の景色はがらりと変わりうる。

野党共闘の果てに6区



 10月10日の公示が迫るにつれ、6区の青柳陽一郎氏陣営の緊張感は増していた。「お話しできることはありません」。民進党が分裂し、新たな所属先を明らかにしない青柳氏本人は報道陣を避けるように街頭でマイクを握っていた。

 2回連続で比例復活当選した青柳氏は「3度目の正直」に執念を燃やしていた。前回選挙で見れば、維新の党から出馬した自身と民主党、共産党の野党票を足すと公明党の上田勇氏の票を上回る。しかし今回、新党・希望の党からは都政で協力する公明に配慮して「排除」された。

 立憲民主党か、無所属か-。共産は青柳氏の立民入りを見越して候補者を取り下げた。青柳氏は6日に立民に入党したが「1票でも多く勝てる選択肢」のため両にらみを続けた。会見を開いたのは8日夜。公示のわずか2日前だった。

 公明内には「希望からの刺客」案が浮上し、小池氏サイドとの極秘会談も行われたという。だが擁立されることはなく、青柳氏が描いた「事実上の一騎打ち」の構図が固まった。

 選挙戦初日。青柳氏は演説で「立民の評判がすごくいい。びっくりした」と吐露し、応援に入った福山哲郎幹事長に「油断するな」とたしなめられた。だがこの時点では前回投票率を下回れば上田氏が有利という見方も広がっていた。

 選挙戦最終日。冷たい雨が降る中、立民の枝野幸男代表が相鉄線二俣川駅前に立つと、聴衆から「枝野コール」が湧いた。中盤に来援した時とは比較にならぬ盛り上がりだった。

 与党統一候補として戦った上田氏には連日のように自民党幹部が応援に入ったが、結果は3503票差で落選した。僅差にも見えるが「この差は大きい」と公明関係者。投票率は前回を2・77ポイント下回っていた。

 公明では全国で唯一、選挙区で議席を失った。比例重複せずに選挙区一本で挑んだ上田氏が8万票以上を獲得しながら落選し、2万4千票余りの串田誠一氏(日本維新の会)が比例復活したというのも公明にとっては皮肉な結果だった。

 同党のある議員は「野党共闘になると与党候補が撃沈してしまう最たる例だった。無党派対策も考えないといけない」と次を見据えている。


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