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買い物の意識変わる? SDGsとは

社会 神奈川新聞  2017年12月10日 10:41


SDGsがビジネスチャンスになると話す大川印刷の大川社長
SDGsがビジネスチャンスになると話す大川印刷の大川社長

 限りある資源の保護などを視野に入れ、これまでの生産や消費を見直そうという動きが出始めている。市民に責任ある消費行動を促す取り組みが民間主導でスタートし、森林保全の目的で設立された国際規格の認証制度を活用する横浜市内の企業もある。国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」では経済活動が与える環境への負荷削減がうたわれており、専門家は売り手、買い手双方の意識改革の必要性を訴えている。

 「地球を一つのショッピングモールと捉えて、地球の未来を考えた買い物を始めませんか」。9月に横浜市内で開かれたイベントで、「OPEN2030プロジェクト」運営チームの一員で博報堂の兎洞武陽さんはこう呼び掛けた。

 同プロジェクトには博報堂のほか、食品大手、消費者団体などが参画。5月から「未来を変える買い物キャンペーン」を全国展開する。兎洞さんは「購入・消費という日常的な行動が環境や資源の保護、維持につながるとの意識を育てたい」と狙いを語る。

 念頭に置くのは、2015年9月に国連サミットで採択されたSDGsだ。貧困や飢餓の解消といった17の大枠の目標の下に、169項目からなる具体的目標が定められている。

 同プロジェクトが着目したのは、17の目標の一つである「つくる責任、つかう責任」。生産者が持続可能な調達方法で商品を供給、消費者もその商品を購入するという好循環を生み出すことを目指している。

国際的なお墨付き


 天然資源の保護や働き手の環境などに配慮し、持続可能な方法で作られている商品かどうか。そんな消費者の疑問に対する答えの一つとなるのが国際規格の認証制度とされる。

 「海のエコラベル」で知られる非営利組織「海洋管理協議会」(MSC)は、乱獲などがなく、漁獲された水産物であることなどを認証する団体だ。安全性の確保といった多くの基準をクリアしたものにお墨付きを与え、商品には認証ラベルが付けられる。

 大川印刷(横浜市戸塚区)は、認証制度の一つ、非政府組織「森林管理協議会(FSC)」が認めた紙を全体の印刷物の約3割で使用している。

 FSCは、森林の環境や労働者、地域住民の人権が守られているかなどをチェック、基準を満たした製品に認証を与えている。

 同社はことしに入り、市民団体や不動産会社と協力し、外国人向けに発行する「多言語版おくすり手帳」にも認証された紙を活用。FSCを活用した事業を着々と広げている。

 取り組みを始めたのは10年以上も前。日本経済が勢いを失い、同社にも不景気の波が襲ってきたころだったという。大川哲郎社長は「地域や社会に必要な企業を目指してきた。環境への貢献と高品質を両立することで製品の魅力を高め、新たな需要を開拓できる」と力を込める。

鍵は消費者の動向


 環境や社会問題を意識した生産・販売は、既に経営戦略で重要になっている。

 国内大手は、マーガリンや化粧品などになるパーム油の生産過程で児童労働などが課題になっていることを踏まえ、非営利組織「持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)」の認証農園が作った油の使用に取り組む。FSCやMSCに認められた商品を積極的に店頭へ並べる大手スーパーもある。

 世界が持続可能な社会の実現へ舵を切る中、日本はどう取り組みを広げていくか。

 同プロジェクトの兎洞さんは、鍵は消費者の動向にあるとみている。今後も市民と参画企業や団体の担当者が直接対話できるイベントを開くほか、「小中学校に出向いてSDGsやプロジェクトの内容を紹介する出張授業にも活動を広げたい」と意欲的だ。大川社長も「企業や地域、市民が一体で取り組めるチャンス」と話し、世界的な動きを身近な活動に落とし込むことを重要視している。

日本は認知度低く


 持続可能な供給方法を取り入れている生産者かどうかで購入を決める消費者が多い欧米に比べて、日本は国際規格の認証制度の認知度が低いとされる。国連が歩むべき指針として定めたSDGsが注目される中、専門家は「消費者教育が不可欠だ」と指摘する。

 2013年のFSC、16年のMSCの各調査によると、日本での認知度はFSCが11%、MSCが15%。一方で、ドイツは68%、61%、英国も72%、40%と欧州先進国とは大きな開きがある。FSCジャパンの河野絵美佳さんは「日本では流通する認証製品が少なく、消費者が直接知る機会が圧倒的に限られる」と話す。

 16年版の消費者白書でも明らかだ。商品やサービスを選ぶ際に意識することについて「価格」「機能」の項目では「常に意識する」「よく意識する」の回答が合わせて9割前後に上るのに対し、「商品やサービスが環境に及ぼす影響」の項目は4割にも満たない。

 厳しい労働環境によって安価が保たれているといった経済活動の負の部分への理解が乏しいとみられる。地球環境政治学などを専門とし、「OPEN2030プロジェクト」でも代表を務める慶応大の蟹江憲史教授は「日本は環境や持続可能性といったテーマへの消費者教育が進んでいない」と指摘する。

 一方、経団連などの調査によるとSDGsへの対応状況について「既に対応」「近いうちに対応予定」と回答した会員企業は4割。内閣府が10月に公表した全国自治体調査でもSDGsの認知度は46%にとどまった。

 蟹江教授はSDGsについて「経済成長と社会貢献の実現を掲げており、企業にとって取り組みやすい。今後は間違いなく企業活動の方向性となる」と言い切る。貧困や格差の問題も目標に定められていることから「地域の抱える課題と各目標を重ねて、達成を目指すことは地方創生においても有効だ」と述べている。


FSC認証の認知度
FSC認証の認知度

 

持続可能な開発目標(SDGs) 2015年9月の国連サミットで採択された2030年までの行動数値目標。貧困や飢餓の撲滅を目的とした00~15年のミレニアム開発目標(MDGs)を引き継ぎ、環境保護や次世代エネルギーの普及、格差の是正など17分野で、世界が抱える多くの課題の解決を目指すことを打ち出している。日本政府はタレントのピコ太郎さんをPR役に起用し知名度アップに努め、経団連も11月に改訂した行動憲章でSDGsを柱に据えた。


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