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発生可能性「変化なし」 予知はどこへ 読めぬ巨大地震
「的確な評価」模索 「南海トラフ地震情報」初の発表

社会 神奈川新聞  2017年11月28日 09:55

南海トラフ地震について判断する評価検討会の初会合 =東京・大手町の気象庁
南海トラフ地震について判断する評価検討会の初会合 =東京・大手町の気象庁

 東海地震の予知に代わり今月から「南海トラフ地震に関連する情報」の運用を始めた気象庁は27日、「大規模地震の発生可能性が平常時と比べて相対的に高まったと考えられる特段の変化は観測されていない」とする初の定例情報を発表した。懸念されるマグニチュード(M)8~9級の発生につながる異変がないか見極める「評価検討会」が初会合を開き、最新の観測データを基に判断した。

 検討会会長の平田直・東大地震研究所教授は会見で、「南海トラフのどこで次の地震が起きるか現時点では分からない。可能性が高まった状態でなくても、次の地震に向けたエネルギーは蓄積されている」と述べ、備えや対策を促した。

 静岡・駿河湾を中心に起きると考えられてきた東海地震予知のため、約40年前に同庁に設置された「地震防災対策強化地域判定会」には国土地理院などが参加してきたが、今回の見直しにより監視対象が南海トラフ全域に拡大。海域の観測がより重要となったため、海上保安庁と海洋研究開発機構が新たに加わった。

 検討会の冒頭、橋田俊彦気象庁長官は「南海トラフの地震は多様性に富み、発生可能性を評価するのは大変難しい作業。引き続き緊張感を持ち、的確な情報発表に努めていきたい」と強調。紀伊半島や四国、九州沖なども含めて地震活動や地殻変動の状況を分析したが、平田会長は「検討材料が増え、詳細な検討は大変になった。しかし、正しく理解して地震の可能性を評価したい」と今後を見据えた。

 検討会は原則、毎月1回開かれ、特段の異常がなければ今回のような定例情報が出される。一定規模以上の地震活動や通常と異なる地殻変動などが起きると臨時に招集され、危険性があるとの判断に至れば、警戒情報を出す。

 

緊急対応「難しい」と元委員苦言も


 「どのような情報を出せば防災につながるのか。その在り方や中身について、十分に議論されたものになっていない」

 気象庁の元職員で、東海地震予知の判断を担ってきた「地震防災対策強化地域判定会」の委員を昨年3月まで務めた吉田明夫・静岡大客員教授は、予知を取りやめる代わりに気象庁が運用を開始した「南海トラフ地震に関連する情報」に苦言を呈する。

 27日に発表された第1号は、異常がないことを意味する定例情報。今後、何らかの異変が観測されれば、「大規模地震の発生可能性が平常時に比べて相対的に高まっている」と警戒を呼び掛ける臨時情報が出される。

 だが吉田氏は「この内容では、どの程度危ないのか分からないし、そもそも地震の発生直前の現象は捉えられない。何らかの兆候をつかんだとしても中長期的な見通しぐらいしか示せないのに、緊急的な情報を出して(住民避難など)一斉の防災対応につなげるのは無理がある」と指摘する。

 気象庁在籍当時は予知関連の業務を担う地震予知情報課長を務め、1995年の阪神大震災を機に強まった予知に対する批判を肌で知る一人。判定会委員と県温泉地学研究所の所長を兼ねている時に起きた東日本大震災を経て「地震の場所、規模、時刻を限定した短期的な地震予知はできない」との思いに至った。

 それ以降は、国を挙げて取り組んできた東海地震予知の見直しを提唱。政府が予知を「不可能」と認め、大きな方向転換が成ったこと自体は評価するものの、「拙速に結論を出した」との印象が否めない。

 「不確実な観測結果を生かすことについて研究者が熟慮を重ね、国民の理解も得ながら、どのような情報提供が望ましいかを考えるべきだ」と訴えている。


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