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いきものがかり聖地、12月に閉店 厚木のCD店惜しむ声

カルチャー 神奈川新聞  2017年11月26日 15:32

ファンが応援メッセージをつづった写真を手にする町田さん=厚木市旭町
ファンが応援メッセージをつづった写真を手にする町田さん=厚木市旭町

ファンが応援メッセージをつづった写真を手にする町田さん=厚木市旭町
ファンが応援メッセージをつづった写真を手にする町田さん=厚木市旭町

「放牧宣言」1年…苦渋の閉店


 厚木、海老名から全国区へと羽ばたいた人気音楽グループ「いきものがかり」ゆかりのCD店「じょいふるミュージック厚木」(厚木市旭町)が12月10日、閉店する。「放牧宣言」と称したグループ活動の休止から間もなく1年。店長の町田良男さん(47)はメンバー3人が再びステージに立つ日をファンや地元住民と待ちわびたが、CD離れが進む中で苦渋の決断をした。“聖地”は惜しまれつつ、前身店を含め半世紀余の歴史に幕を閉じる。

 「地元のみんなの応援とは、心づよいものがある」「帰りたくなって帰ってきたよ!」。小田急線本厚木駅から徒歩3分。「じょいふる~」の店内にはメンバーのサインやメッセージ入りポスターが壁一面に張られる。一角にはグループが生み出したシングルやアルバム計50作以上のCDがずらりと並び、作品を紹介する手作りのポップが一枚ずつ添えられている。

 前身は、厚木市内のメインストリート「厚木一番街」にあったCD店「タハラ」。14年前、グループのインディーズのデビューアルバムを初めて店頭販売した老舗だ。3人はメジャーデビュー前から足を運んでいた。

 町田さんがメンバーと初めて出会ったのは10年ほど前。「店に並んだアルバムを見ながら『置いてある』って、元気が良くて」。目を細めつつ、振り返る。「人気が出てからも時折、顔を出してくれました」

 おもちゃ屋よりレコード店が好きな少年だった。卒業文集には「将来の夢はレコード屋さん」と書いたと記憶する。CDはレコード独特の音切れがなく、初めて出会った時の感動はひとしおだった。

 大学時代からタハラでアルバイトとして店に立ち、そのまま就職した。しかしCD離れは止まらず、11年1月に閉店。町田さんは最後の店長だった。

 転機は東日本大震災。津波にのみ込まれるまちや、突然日常を失った人々の姿に「人生は何が起きるか分からない。後悔しないよう生きていこう」。CD店を開きたいと、くすぶっていた思いに火が付いた。

 音楽でまちを明るく、まちのみんなで一緒に音楽を楽しめる場所に-。閉店から8カ月後の同年9月、タハラの精神を受け継いだ「じょいふる~」を開いた。

 タハラで店に立ち始めて以降、CDに囲まれて四半世紀。足を運んでくれる人との距離が近いからこそ、多くの出会いがあった。CD目当ての客ばかりではない。お年寄りの女性が訪ねてくることもある。新調した音楽機器の使い方を尋ねようと、町田さんを頼ってのことだ。一方、特設コーナーを設けて地元アーティストを応援してきた。

 「いきものがかり」のファンは国内外から訪れ、応援メッセージをつづった写真は2千枚を超える。市内に住む牧嶋明美さん(45)と結衣さん(17)も店とグループを愛する親子2代のファンだ。「応援できる場所が地元にあるから意味がある。なくならないで」とさみしさを募らせる。

 活動再開をファンや地元住民は待ち望み、町田さんも思いをともにしてきた。「ここがなくなっても3人が頑張るのは変わらないと思う。でも戻ってくるまでは店を続けたかった。一緒に応援してきた人たちには本当に申し訳ないです」

 悔しさは募る。それでもグループが奏でる『歩いていこう』に自身の思いを重ね、前を向く。これまでは一緒だったけれど、それぞれ別の道を進んでいこう-。そんな別れを歌った曲だ。

 「まちを明るくしてくれる音楽をみんなで応援する象徴のような場所だった。店に込めた思いのバトンは、まちの一人一人に託します」。『ありがとう』と感謝を込め、エールを送り続ける。


いきものがかり 厚木市出身でボーカルの吉岡聖恵さん、いずれも海老名市出身でギターの水野良樹さん、山下穂尊さんの3人グループ。小田急線本厚木駅や海老名駅近くで路上ライブを重ね、2006年に「SAKURA」でメジャーデビュー。NHK紅白歌合戦には9年連続で出場した。メジャーデビューから10周年を区切りに、今年1月からグループとしての活動を休止している。


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