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時代の正体〈551〉改憲論議に先手打つ 山尾志桜里氏が語る(下)

時代の正体 神奈川新聞  2017年11月09日 05:00

「立憲主義という国家の基礎が破壊されようとしている」と話す山尾志桜里氏
「立憲主義という国家の基礎が破壊されようとしている」と話す山尾志桜里氏

【時代の正体取材班=田崎 基】憲法を守らぬ為政者が改憲に前のめりになる姿に直面し、衆院議員の山尾志桜里氏(43)は法律家としての矜持(きょうじ)を持って阻止に動く考えだ。「立憲主義という国家の基礎が破壊されようとしている」。この危機的状況にどう向き合うか。改憲・護憲の従来型二項対立から脱却し、より立憲的な憲法を目指し、野党こそが先手を打つべきだと訴える。


 安倍晋三首相による憲法改正提案とは「改憲」自体が自己目的化し、変えやすいところのつまみ食いを繰り返して出てきたものにすぎない。そんな改憲提案には付き合いたくもないが、これをきっちりはねのけるためには、立憲主義への深い理解に基づいた憲法改正の方向性を示す必要がある。

 これまでの改憲論議は、「一文字でも変えたい改憲派」と、「一文字も変えさせない護憲派」による二項対立の構図にからめとられてきた。

 だがもうこうした不毛な構図からはいい加減脱却すべきだ。私は現代において「現憲法は、権力を縛るという憲法たる役割を十分に果たせているのか」と社会に問いたい。

 安倍政権はこれまで積み上げてきた憲法解釈を破壊し、憲法が果たしてきた「権力を縛る」という立憲主義の「留め金」を外した。その最たるものが2015年に強行採決した安全保障関連法制だ。

 これには布石があった。安倍首相は内閣法制局の人事に手を突っ込んだのだ。首相と離れた立場から法案の合憲性を判断する役割を内閣法制局は果たしてきた。法制局長官人事に首相は手を入れないという不文律によって実質的な独立性が担保され、この独立性によって法案審査の中立性は保たれてきた。

 ところが第2次安倍政権はこの人事を掌握することで、法案の事前合憲性審査の仕組みを根底から破壊したのだ。そして許されざる解釈改憲を駆使し「違憲」の安保法制を数の力で成立させた。

 ではこの「留め金」をかけ直すためにはどうすればいいか。内閣では機能し得ないことを安倍政権が証明した。そうであるなら司法、つまり「憲法裁判所」を設置してはどうか。それには改憲を議論する必要がある。これは「留め金」をかけ直すことの一例だ。


やまお・しおり 1974年東京都生まれ。衆院議員、元民進党政調会長。99年東大法学部卒、2004年東京地検検事、07年検察官退官、09年衆院選で愛知7区から出馬し初当選。12年落選、14年衆院選で2期目の当選。民進党所属の法務委員、憲法審査会委員など歴任。
やまお・しおり 1974年東京都生まれ。衆院議員、元民進党政調会長。99年東大法学部卒、2004年東京地検検事、07年検察官退官、09年衆院選で愛知7区から出馬し初当選。12年落選、14年衆院選で2期目の当選。民進党所属の法務委員、憲法審査会委員など歴任。

 9月に安倍首相が仕掛けた「大義なき解散」も同じ構図にある。これまでの政権は、なんだかんだ言っても一定の建前、つまり「大義」を見繕ってきた。だが今回安倍首相が掲げた理由は「大義」とは到底考えられない代物だった。

 子育て支援の財源配分が争点だと言ったそばから消費増税のさらなる延期に言及してみたり、北朝鮮への対応が国難だと言いながら、その重要な期間に1カ月もの空白を作り出したりした。「大義」などもはやいらない、という傲慢(ごうまん)をも恥じない権力の暴走をみた。

 ここまで憲法を踏みにじる政権が現れた以上「解散権の制限」も改憲事項として検討していいはずだ。つまり立憲主義的発想から導かれる「7条解散の制限」だ。

危うい自衛隊明記


 そしてやはり本丸は「9条」だろう。安倍首相の提案は「『自衛隊』を明記するだけ」というものだが、「明記するだけだからこそ危険」と断言しておきたい。むき出しの「自衛隊」が正当化される。この「正当化」はコントロールと表裏一体でなければならない。

 仮に自衛隊を書き込むのであれば、きちっと歯止めとなる条文が必要となる。例えば国会によるコントロール。政治家による自衛隊の統制をどう規定するのか。また、内閣との関係も問題になる。そもそも憲法は軍事的実力組織を持たないことを前提としている。

 だから憲法上の内閣の権能には「外交関係の処理」という記述はあっても自衛権を指揮する条文はない。読み取れるとすれば「一般行政事務」に該当するのかもしれないが、命を懸けてこの国を守る実力組織の運用が「一般行政事務」という記述で足りるとは到底考えられないだろう。

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