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時代を切り取り時間を表す フォトシティさがみはら

カルチャー 神奈川新聞  2019年11月25日 19:07

初沢亜利「隣人、それから。38度線の北」から。胸の金正日バッジ以外は、韓流ドラマの一シーンのようだ
初沢亜利「隣人、それから。38度線の北」から。胸の金正日バッジ以外は、韓流ドラマの一シーンのようだ

 19回を重ね国内有数の写真賞に成長した相模原市の「フォトシティさがみはら」。賞をはじめ親子や子どもの写真教室なども併催するプロアマ合同の「総合写真祭」は、時代を鋭く切り取る作家の顕彰を通じ、写真の社会性を問い続けてきた。今回のプロ部門受賞作に、その実践を見る。

 受賞作品展は同市中央区の相模原市民ギャラリーで10月に開かれた。来年2月には東京でも展示される。


太田順一「無常の菅原商店街」から。焼け焦げた人形は風化した地蔵のようにも見える
太田順一「無常の菅原商店街」から。焼け焦げた人形は風化した地蔵のようにも見える

 最高賞の「さがみはら写真賞」は太田順一の「ひがた記」。大半がコンクリートに覆われた大阪湾にあって、実験用に設けられた人工干潟に通った。干満のあわいに現れる生の痕跡。水生生物、水鳥の足跡、取り残され干上がった魚…。活力と無常観が交錯する干潟という場と、背後に写り込む人工物との対比は「人間の時間」を相対化する。

 写真展では太田の旧作も展示された。阪神大震災直後を記録した「無常の菅原商店街」は、干潟の写真と不思議に呼応する。崩れ落ちた街の全景と、食器や印鑑といった遺物のクローズアップとの対比が、あったはずの生活の記憶を呼び起こす。


エリア・パク「二面の海」から。東日本大震災の被災地にあったカメラの数々
エリア・パク「二面の海」から。東日本大震災の被災地にあったカメラの数々

 「アジア賞」は、韓国出身のエリア・パクの「二面の海」。くしくも、彼も震災を通じて現代を捉えた。日韓を行き来し創作を続けるパクは東日本大震災の4日後に宮城県に入り、泥の付いたカメラや写真立てに焦点を合わせた。それらは失われた時間の象徴だ。

 パクはまた、災厄をもたらした海を、日韓をつなぐ存在としても位置づける。船窓のような円い枠を付けて撮影した貨物船や海辺の都市は、記録とともに、媒体の役目も写真にあることを語りかける。今はもういない人と現在の人々をつなぐ家族写真のように。

 新人奨励賞は初沢亜利の「隣人、それから。38度線の北」と、山元彩香の「We are Made of Grass,Soil,and Trees」。

 初沢は監視下ながら、ミサイル問題とは別の、北朝鮮の人々の日常を撮った。しゃれた服装の店員、モーターボートで派手に結婚を祝う家族、派手なバー、ミッキーマウスのリュックを背負って田舎道を歩く幼い子たち…。山元はエストニアの女性の肖像に人生や風土を重ねた。これらもやはり時間の蓄積を表している。

 市はフォトシティの歴代受賞作をはじめ、「負の昭和」を記録し続ける市内在住の写真家、江成常夫の作品群を所蔵するが、美術館はなく鑑賞の機会は限られる。20回の節目を前に、時代を映す作品群の展示場が求められている。

 受賞作品展は来年2月12~17日(16日休館)、東京都新宿区西新宿の新宿エルタワー28階「ニコンプラザ新宿 THE GALLERY」で開催。午前10時半~午後6時半(最終日は同3時)。入場無料。問い合わせは、同ギャラリー☎03(3344)0565。


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